駿ちゃん先輩のせーのっ!の声で息を吸って、自由に歌い出す。

恥ずかしそうに歌う折原さんは可愛くて、思わず笑ったらふんって横を向かれたけど。

それ見て駿ちゃん先輩が大きな口で笑った。

誰が見ているわけでもない、私たちだけの演奏はすごく楽しかった。

どうしても少しだけ足りない気がしちゃうけど。


「サンキュ~~~~~!みんなありがとぉぉぉぉ~~~~!!!」


まるでコンサートの終わりみたいにギターを掻き鳴らす、座っていたはずなのに立ち上がった駿ちゃん先輩は右足をパイプ椅子に掛けていた。

ジャンッ!と最後はカッコつけちゃって。
暗かった雰囲気がちょっとだけ明るくなっていた。

「いやぁー、楽しかったね!」

カラッとした笑顔を見せる駿ちゃん先輩に私も折原さんも自然と笑っていた。

「奏も来たら絶対楽しかったのにな」

ギターをスタンドに戻した。

2つ並んだギター、駿ちゃん先輩のギターと奏くんのギター。

「俺、奏のギター好きなんだよね」

戻したギターを見ながらふっと微笑む。

「いい音してるなって、かっけぇなーって、俺より全然上手いしさ。好きなんだよな」

「私も好きですよ、奏のギター」

折原さんが駿ちゃん先輩の隣に並んでしゃがみ込んだ。立てかけられたギターを見つめて。

「好きだよな!」


私も好きだよ、奏くんの弾くギター。

奏くんから奏でられる、奏くんからしか聴けないメロディー…


あの衝撃はずっと私の中に残ってる。


さっきまで騒がしかった部室がしーんと静かになった。


みんな好きなんだよ。

言わないだけでみんな好きだよ。



みんな奏くんのことが好きだよ。