「じゃあそろそろ…」

「私も!」

思いっきり立ち上がったから、パイプ椅子がガシャンって音がした。

「私も思った!思ってた!駅前で弾いてる奏くん見た時、すごい上手だなって…でもそれだけじゃなくてこうっ、響いてくるっていうか胸に!それで…っ」

少し上を見る。

真っ直ぐ目の前に立って。

「私も奏くんとおんなじ気持ちだよ」

奏くんのギターから流れるメロディーは私の心をえぐって、忘れられないくらい夢中になった。


あの日から今もずっと、私はー…


「そっか、じゃあお揃いだね」

「お、お揃い…?」

「同じ気持ち、なんでしょ」

例えばもし本当に私と奏くんがおんなじ気持ちだったら、それは…

グッと力強く目を合わせる。


今私が思ってること、それもおんなじだって思ってもいいの?

だってそーゆうことだよね?



私を最初に見付けてくれたのは奏くんだよ。



「奏くん…っ」

2人しかいない空間で、こんなにも静かだからドキンドキンする心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかって思った。


好きだって、言っていい?


奏くんのことが好きだって、今なら言える気がしてー…


「私、奏くんのことっ」

「あ、もう時間じゃない?」

「え…?」

言いかけたことを掻き消されるように、奏くんがにこっと笑った。


今のは…


わざと?

わかってて話を止めたように思えたんだけど。


「遅刻しちゃうよ」

泣きそうになりながら必死に笑顔を作った。

「う、うん…そうだね」

それ以上は言うなって言われてるみたいで。

言わせてももらえないんだね。