隣で奏でられるメロディーを聞いて目をつぶる。


あぁ、今回のはバラードかぁ。

いろんな曲が作れるんだな奏くんは、すごいね。


すぅっと息を吸って、声を出す。


歌詞なんてない。

思うがままに、好きなように声を出すだけ。

それがすごく心地いい。


奏くんから流れて来るメロディーは私を夢心地にさせてくれるの。



なんて、言い過ぎかな。



「~♬」


ジャーンッ、と優しくなでるように弦を弾いて曲が終わる。

どちらともなく顔を合わせ2人で笑った。


たぶんね、同じこと考えたよね。

めっちゃくちゃハマったなぁーってね。


「ありがとう、灯璃。よかったよ」

「ううん、奏くんの曲がいいんだよ」

「いや、灯璃の声がいいんだよ」

「そんなことっ」


って、また顔を合わせて笑った。


何褒め合ってるのって。


奏くんのギターを聴くのは久しぶりだったから、久しぶりに聴いたから胸かポカポカしちゃった。


「灯璃の声ってさ、いいよねすごく」

奏くんが立ち上がってギターをギタースタンドに置いた。

もうすぐホームルームの時間になる、ここから教室へは遠いから早めに片付けないといけないから。

「灯璃は何もないって言ったけど、初めて灯璃の歌声を聞いた時…体中衝撃が走ったみたいだったんだよ」

私に背中を向けながら奏くんが言った。

「そんなの今まで言われたことなかったよ」

今まで…思ったこともなかったけど。

歌ってて気持ちいいなんて感じたことなかった。


そんな歌は初めてだったよ。


「ずっと灯璃の歌を聞いていたいって思っちゃった」

振り返って座っている私の方を向いた。

「1人でいるのを見てよかったって思った、だって俺が最初に見付けたんだって思ったから」

にこって笑ったの、でもその表情は笑ってるようには見えなかった。



寂しそうだった。