「おはよう、奏くんっ」

「灯璃!」

次の日の朝、私も早く学校へ行ってみた。
なんとーなくそこにいる気がしたから、軽音部の部室に。

「どうしたの?」

「奏くんいるかなって思って」

午後の部活には来てないし、夜遅くまでバイトしてるって聞いたし、ということは最近ギターは弾いてないんじゃないかなって思った。

だから朝早く学校に来る理由があるとすれば、部室に来てギターを弾いてる!って思ったんだ。奏くんがギターが好きなのは演奏する姿を見てればわかるもん。

「奏くんがギター弾いてるんじゃないかなって思って来たの」

「すごいね灯璃、名探偵だね」


………って。


来たはいいけど来てどーするの私!?

1人で弾きたかったかもしれないのに!


パイプ椅子に座ってギターを抱えた奏くんが隣の空いているパイプ椅子にトンッと触れた。

「座らない?」

私の方を見ながら。

「……座る」

コクンと頷いて隣に座った。

朝のしんっとした空気に心臓がドキドキする。

「あ、今週クリスマス会だね!」

「うん、そうだね」

「楽しみだよね、軽音部っぽくクリスマスソング演奏したりするかな?」

ドキドキを紛らわすかのように早口になっちゃった。それこそギター弾くの邪魔しちゃってる。

「ねぇ灯璃」

「ん?」

「歌ってよ」

首を傾けながら、私を見る。

かすかに微笑んで。

「…いいよ、どれ歌う?やっぱ定番なのはジングル・ベルかな、あとはサンタが街にやってくるとか…」

「じゃあ昨日出来た新曲で」

「知らないんだけど!」

私の渾身のツッコミ?にくすくすと笑ってた。

奏くんの笑った顔って柔らかいよね。

あんまりゲラゲラ笑ってるのとか見たことないし、いつもふんわりしてる感じで、それでいてどこか寂しげで。

「新曲って奏くんまた曲作ったの?」

「うん、今から弾くからテキトーに声入れてよ」

「なんて無茶振り…!」

次の言葉を言う前にはもう演奏が始まっちゃてて、でも今更もうそんなの慣れたけど。

奏くんに歌ってって言われるのは、もう何回目だろうね。