「そーいえば奏くん今日バイトは?」

「あるよ、これから。でもまだ時間あるから」

「本当にずっと忙しそうだよね」

クリスマスコーナーから離れて店内をフラフラする。使い道のあるものって何かな、たくさんあるんだろうけどちょうどいい使い道のあるものってパッとは浮かんで来ない。

「あ、でもね」

前を歩いていた奏くんがくるっと振り返った。ピクッとなりながら顔を上げた。

「クリスマス会の日、バイト休みにしてくれるって」

「そーなの!?」

「うん、店長に何気なく話したらいつも真面目に働いてくれるから1日くらい楽しんできなよって言われて」

え…
てことは部活最後の日、奏くんといつもより多く一緒にいられるってこと?

ちょっとだけでも、クリスマス会ができるってことに十分嬉しかったんだけどさらに…?

「だから楽しみだね、クリスマス会」

奏くんが目を細めて笑った、私も笑って返したかったけどドキンッて鳴った胸の音が大きすぎて上手く笑えなかった。

「でもバイトするのも好きなんだけどね俺」

「楽しみ!クリスマス会!」

だからちょっと時差があるみたいになっちゃった。

しかも奏くんの言ったことに被せるみたいに。


でも笑ったから、奏くんが。

静かに笑ったから。


「ねぇねぇ灯璃、これはどう?マグカップ、なら使い道あるよね」

「あ、可愛い!」

ちっちゃな2つの雪だるまがちょこんっと身を寄せて、1つのマフラーで仲良く眠ってるイラストが描かれたマグカップを奏くんが手に取った。

「これ灯璃欲しい?」

「うん、欲しい!マグカップは毎日使うしイラストがめっちゃ可愛いよね!」

マグカップを両手で持って私の方を見る。

「じゃあこれにしよ」

わざと目を合わせるように。 

「…っ」

笑った。 

「灯璃は何かいいのあった?」

「え、私は…まだっ」

「プレゼント交換って迷うよね、みんな欲しいものバラバラだろうなって考えると」