って思ってたのに忘れてた。

自分には関係ないこと過ぎて気にしてなかった。


あれ?なんか今日やたら人通り多くない?


なんて思ってる場合じゃなかった。

駅の方に歩くにつれて賑やかになっていく様子とちらほらと目に入る浴衣姿の子たちにハッとした。


今日は夏休み最後の日定番の夏祭りの日だ。


しまったーーーー!
そんなのすっかり忘れてたーーーーー!!

なのにいつもと変わんないTシャツ短パンで来ちゃったよ!

うわぁー、最悪!
みんな可愛くおめかししてるのに何この人生廃れた感!?やばくない!?

もっとちゃんとー…


周りを見ると楽しそうでみんなキラキラしてて服装も表情も明るかった。


私には持ってない、私にはない姿。


「……。」

…関係、ないか。
どんな格好していようと別に誰も見てもないよね。


だって1人だもん、私。


アイス買いに行こう、そんで食べながら帰ろう。


今日が最後の夏休みだもんね、夜コンビニへ行くのも今日が最後。

夏休みの間だけの楽しみだったんだから。

そうやって決めてたんだ。


止まっていた足を再び動かした。

ササッと頭は切り替えて、今日は何のアイスにしようかなって考えながら。

いつもはガリガリ君だったけど今日はちょっと高いやつにしようかなーってもはやアイスに集中する感じで、夏祭りなんか通り越してコンビニへ行こうと思った。

駅前でやってる夏祭り、だけどあの木の下のベンチとは反対側だからこっちは空いてると思うしね…

「…っ」

だけど…

せっかく歩き出したのに、また足が止まっちゃった。


あのベンチの前を通ろうと思ったのに、あんなに人がいっぱいいるとは思わなかったから。

何かの周りを囲むように浴衣姿の可愛い女の子たちが人だかりを作っている。


その真ん中には何があるの?

何をしてるの?

誰がいるの?


その瞬間、ギターの音が鳴った。



奏くんの弾くギターの音だ。