文化祭が終わって期末テストが終わったら本格的な寒さがやって来た12月。  

息を吐けば白く曇って手袋をしていても指先が冷える、そんな季節になった。

「うあっべ、すっげー寒くない!?」

「駿二先輩舌回ってないです」

軽音部の部室は夏は超暑いし冬は超寒い。廊下に至っては人通りが少ないこともあって、空気も澄み切っている感じがしてより寒いような気がする。

「奏って今日も来ないの?」

「今日もバイトみたいですよ、ほとんど毎日ですね」

パイプ椅子にちょこんと膝を立てて座り、出来る限り丸くなった駿ちゃん先輩がホワイトボードを磨く折原さんに問いかける。

文化祭が終わってからめっきり部活の頻度が少なくなった。

元々週2回って聞いてたけど、最近は2回もなければ1回あればいい方でそんな貴重な1回でも奏くんは来ていなかった。

いや、実際には来てたんだけど。

ちょっと顔出して、特に何もすることないよねって帰って行った。部室の鍵は駿ちゃん先輩に預けて、バイトの日は鍵当番よろしくって伝えて。

文化祭前は結構部活来てたもんなぁ、バイトできなかったから今その分取り返してるのかも。

「どうする3人でトランプでもする?」

「しませんよ、することないなら帰りますけど」

「藍ちゃん、大富豪出来る?それともポーカー?3人でババ抜きしてもねぇ」

「しないって言ってるじゃないですか」

「あ、灯璃ちゃんは大富豪出来る?」

折原さんの眉がキリッと吊り上がってるのもお構いなしに駿ちゃん先輩は話続けていた。その流れで私に話しかけられるのは若干気まずいのだけど。

あと大富豪もポーカーもできません…。