「奏の居場所はここだから、…だけどそれが全てとも思ってほしくなくて。だから駿二先輩と軽音部に入るって聞いた時、自分で自分の居場所を見つけたんだなって嬉しかったんです」

失った表情で壊れていく家を見ていたあの頃から、明るく自分のことを話すようになった奏に私だって嬉しかった。

本当に嬉しく思ってた。


「でも…、そこに私もいたかった」


瞳が熱くなる、でも泣かないで私。

これはいいことよ。


「ずっと奏といたかった、離れることなんて考えたくなかったんです」


私がいたら、そこは奏の場所じゃなくなってしまうんじゃないかって不安だった。

せっかく奏が自分自身で見付けた場所なのに。


「だけど結局、部室のドアを叩いてしまいました」


でも入れなかった、軽音部には。

でも入りたかった。


本当はずっと入りたかったの。


「奏の幼馴染みだからって、奏の境遇を利用するかのように」


いつか奏に、軽音部に入らない?って言ってもらえるんじゃないかって待ってた。

誘われたら入ろうと思ってた。

そんなこと思ってないで自分から入ればよかったのにね。

そしたらもっと奏といられたのに。



「愛だね、藍ちゃん」