駿二先輩をテラス席というベランダに案内してドリンクを取りに行く。

推し色ソーダのいいところは作るのが簡単というところ、オレンジは赤と黄色のシロップを混ぜる他のソーダより過程が1つ多いけどそれでも簡単に作れるのが文化祭の企画ものとしてピッタリだった。プラスチックのコップを使えば見栄えもいいから。

「お待たせしました」

「あ~、ありがと~!」

椅子も用意してあったベランダだけど、座らずに柵に寄りかかってグラウンドを見ていた。ここは2階だから、そんなに景色のいい場所ではないけれど。

「推し色ソーダのオレンジです、どうぞ」

「ありがと~、めっちゃキレイじゃん!」

「外で見る方が色はキレイなんですよ」

「マジ!?じゃあテラスにしてよかったな!」

ごくごくっと勢いよく駿二先輩が飲んだ。その反応が見たくて隣に立った、イチゴとレモンの組み合わせの感想を聞きたくて。

「甘いあとに爽やかな味がするけど、何味かわからない!」

「複雑な味ですよね」

「絶対オレンジだと思ったよ!!」

目を開いて、大きな声で、誰よりも良いリアクションしてるなってそれにも笑いたくなってしまった。

「まぁ飲めなくはないからいいけどさ」

また一口飲んだ。やっぱり複雑そうな顔をした。

「あ、そうだ藍ちゃん!」

「はい」

「午後の軽音ステージの録画、今日もよろしくね!」

「はい、大丈夫です。午後には当番変わってもらう予定なんで」

私はステージには上がらない、その代わり下から演奏してる姿を撮影する。

これが私の仕事。

あとから見直して、反省点を述べたりするのに使うから。通常スマホでのステージ撮影はNGだけど部活動の一環、その手伝いとして許可をもらってる。

「ねぇ、藍ちゃん」

「はい?」

ひゅーっと風が吹いて、前髪が揺れた。

11月初旬、今日は特に温かい秋の日だった。