「だから私折原さんのことっ」

「藍ちゃーん!灯璃ちゃーん!」

望月さんの声を掻き消すかのように遠い廊下の向こう側からブンブンと大きく手を振ってこっちに人ごみを掻き分けて走ってくる駿二先輩が目に入った。

満面の笑みで、意気揚々とやって来る。

「鮎森駿二参上!」

シュタッ、と効果音を付けるように左膝を床に付け右足を立て両手を伸ばして斜め上に…今度は何に影響されたのかわからないポーズを決めた。

「遊びに来たよ!」

いつでもどこでも駿二先輩は明るい。

「…いらっしゃいませ」

「い、いらしゃいませ!」

それは圧倒されるぐらい。
これは望月さんとも同意見なんじゃないかと思う。

「2人ともウェイター可愛いじゃん!似合ってる!」

「ありがとうございます、飲んで行ってくれるんですか?」

「もち!藍ちゃん案内してよ!」

「でも私呼び込み…」

「あ、私看板持つよ!」

望月さんが手持ち看板を私の手から持って行った。そこそこ重いのに、小さな望月さんは大丈夫かなって思ったけど案外力があった。

「じゃあ、中にどうぞ」

「わーい!」

揃えた右手で案内した。

教室の中もお店の名前通りカラフルにするために風船が浮かんでる、看板にも色とりどりの風船を描いたてこれがカラフル喫茶のモチーフにもなっている。

「イートインも出来ますし、テイクアウトも出来ますけど、どうしますか?」

「イートインって座るとこあるの?」

「今は…テラス席なら空いてます」

「それって窓外のベランダだよね?」

窓際のドアから外に出られるベランダに数個椅子を置いてそこをテラスにした。これは有効活用ってやつで、提案してみたら採用してもらえた。

「あ、でも先に注文お願いしますね」