「さっすが藍ちゃん!アドバイスが的確!!」

「言われる前にやってください、明日本番ですよ?」

「だよね~~~っ、よしやろう!も1回やろう!!」

駿二先輩が大きな声で呼び掛ける。
それに、うんっと奏が頷いた。

この景色を見るのもどれぐらいぶりかな、こんなにいい景色だったんだ。

みんなが演奏している姿を見るのは。

私も自然と顔が緩んだ。

「折原さん、あのっ」

奏と駿二先輩があーでもないこーでもないと話始めたところ、抜け出して来た望月さんが私の元へ駆け寄って来た。

「すごいね、一瞬でどこがよくなかったかわかっちゃうんだ!私の声までっ」

「何度も聞いたからね」

それも飽きるほどに。
始業式の時、録画した映像で。

「もう望月さんの歌い方の癖までわかってるから」

「ほんとに!?私でもわからないのにっ!?」

聞きすぎて、私も上手く歌えるんじゃないかって錯覚しそうになるぐらい。

「ありがとう、望月さん」

「…え?」

「昨日、手伝ってくれて。おかげで今日部活に来られたから」

「そんな…っ」

望月さんの方を見た。

にこっと笑って見せた。

「ありがとう」