「奏…」

「うん?」

「奏はいつもギター弾いてたよね」

「うん」

「私、奏のギターが好きだった」

幼い手で弾く全然足りない音やバラバラなリズムを奏でてる時から、弾いてる姿を見るのが聞くのが大好きだった。

「でも奏は自分が作った曲は、私の前では絶対に弾いてくれなかったよね」

「それはっ」

「私には音楽のことなんかわからないと思ったから?」

たくさん聞きたくて何を弾いてもらおうか考えてた。

だからギターで弾けそうな今日を覚えたりもした。

「違うよ!そうじゃないっ!」

「じゃあどうしっ」

「藍がいつもこれ弾いてって言うから…っ!」

いつも私が…


私ばっかり奏のこと、想って来たんだなって思ってた。


「それが求められてるみたいで嬉しかった」


私だけが奏のこと好きなんだなって思ってた。


「弾いたら、藍が笑うから」


必死に堪えていた涙が零れ落ちた。



いつも私の隣には奏がいた。

奏の隣にずっといたかった。



だから奏と話すのが怖かった。


別れの言葉なんか聞きたくなかった。



でもそれは奏も同じで。



言いたくなかったよね。

こんなこと言わせてしまってごめんね。


ぽろぽろ零れる涙を拭った。

上手く前が見れない。


だけどちゃんと奏の顔を見なくっちゃ。



奏のことを想うなら…



静かに息を吸って、震えそうになる声を鎮めるように出した。



「奏、私のこと振っていいんだよ」