「藍が来てくれたから家に帰れたんだ」

鍵を上に掲げ、揺れるキーホルダーを見つめた。

「俺の家が壊された日、この鍵くれたんだよね」

あの日も奏は家を見に行っていて、どんどん形を失っていく家をぼぉーっと見てた。

帰ろうって言ってもまるで声が届いていないみたいで、無表情でただひたすら見ていた。

家が壊されていくたびに奏の心も壊されるんじゃないかってすごく怖かったのを覚えてる。


だからわがままを言ったの。


お父さんとお母さんにどこか遊びに行こうって、もうここにはいたくなくてどこか行きたかった。


その連れてってくれたところがひまわり畑だった。


たぶん近かっただけなの、行きやすい場所を考えたらそこぐらいしかなくて…

突然だったから。



でもひまわりを見て奏が少しだけ笑ったから。

好きなのかなって思った。



そしたら私も好きになった。


奏を笑顔にしてくれるひまわりが好きって思った。



それでね、いつもで家に帰って来れるように鍵を渡したんだ。

ここが奏の家だよって、いつでも帰って来ていいんだよって。


ひまわりのキーホルダーを付けて。


「嬉しかったよ、もらった時…奏のだからって言ってくれた時嬉しかった」

奏の居場所はここにもあるよって言いたかったの。

「俺、藍にはいっぱい感謝してる。藍がいなかったら今こうしていられなかった」

奏が私の前に立った。

視線を下げて私の顔を見る。

「大事な存在だよ、この先もずっと俺にとって藍は大事な人。ずっと一緒にいたいって思ってる」

どうしよう、目が滲んで上手く顔が見れない。

涙がこぼれないように必死に目を開けた。