「…って、私は思ってる…です」

すーっと元の場所へと戻っていった。急に小さくなったみたいに、ぴしっと正座をして収まった。

言っておいて望月さんの方が照れたから。

“また時間出来たら軽音部来てよ、藍ちゃんいないと寂しいからさ!”

好きでやってただけなんだけど、みんな演奏したり歌ったり練習するの忙しいだろうからそれ以外の雑用ぐらい私にも出来るかなってそう思って始めた。

だからそんな風に言われるようなことはしてない。

「…望月さん」

「は、はい!」

「手動かして、今日中に終わらせたいから」

「はいっ!!」

今日も遅くまでかかるかなって思ってた。

チラシの印刷も職員室の印刷機が込んでるみたいでしなのは全然戻って来ないし、部活をしていない人はすでに持ち場が決まってて自分の作業に追われてるから誰かを手伝うのも難しくて、自分のことは自分でしなくちゃいけない。

だから、今日もギリギリまで居残ることになるんだろうなって思ってた。


だけど…

「そんなに変わらなかったかな」

いつもより少しだけ早く終わっただけだった。

「申し訳ない、一生懸命やってるつもりなんだけど下手過ぎて…!」

「いつも居残り時間オーバーしそうなぐらいまでやってるから早く終わった方よ」

30分早く終わったことは大きい。明日に仕事が残らなかったことはもっと大きい。

「私ペンキ戻して来るから望月さんはもういいよ、先帰って」

洗ったハケを廊下の手洗い場に干した。明日の朝回収すればいいよね。

「待ってるよっ」

「ううん、部活も…もう終わりだけどごめん手伝ってもらって」

外を見れば陽が落ちてすっかり暗くなっている、最近ずっとこんな感じだったから何も思わなかった。

今日は少しだけ早く帰れる、早く帰ろう。


それでー…