「しなの、手持ち看板って出来た?」

「あ~っ、それまだ!下絵は出来てるんだけど色塗ってない!」

相変わらずバタバタ忙しそうなしなのは今日も声を出していた。

文化祭が近付くにつれて準備もラストスパート、ただやらなきゃいけないことは近付くほど増えていく。足りないものが目に見えて来るから。

「えっと…、やる!やるんだけど先にチラシ印刷してくるわ!」

1枚の紙を私に見せた、当日配布用のチラシの原紙だった。確か配布用に100枚って決めたから…今から100枚のチラシを職員室まで印刷へ行くのは結構時間を要する。

「私やっておくからいいよ、しなのは印刷して来て」

「ありがと藍~~~!ほんとめっちゃ助かる!」

とりあえず先に進めておいた方がいいなと思って、教室の後ろの隅っこに立て掛けてあった手持ち看板を取りに行った。

裏側になってたから気付かなかったけど、表を向けたらしなのの言う通り鉛筆で下絵だけが入った状態だった。

でも下絵が描いてあるなら塗るだけだし、今日の帰りだけで…終わるかな。

明日が文化祭前日、明日は机に椅子に他の教室に移動させて教室中を飾り付けるから今日出来ることはなるべく終わらせておきたい。


だから今日も部活には行けそうにない、けど。


「……。」

ふぅっと息を吐いて、すっと息を吸う。

気合いを入れ直して手持ち看板を掴んだ。

今やらなきゃいけないのはこの手持ち看板の色塗り!さっさと取り掛かって今日中に終わらせるんだ!

1人で塗るのは少し大変だけど、出来ないこともないよねきっと…

「折原さん!私も手伝うよ!!」