「藍ちゃーん!ちょっといい?」

「…駿二先輩」

文化祭まであと3日、今日の放課後はメニュー表を作ろうかなって思ってた。

「ごめんね!忙しいよね!?」

「いえ…、大丈夫ですけど」

手を合わせた駿二先輩が軽く首を傾ける。

わざわざ1年の教室まで来て、どうしたんだろう。

部活へ行く人、このまま残って文化祭の準備をする人…の前で話しているのはちょっと気になるかなと思って少しだけ移動することにした。

誰も来ないであろう空き教室の前の廊下、だけど文化祭のせいでいつもよりは賑やかだった。

「何かあったんですか?」

「あぁー、あのさぁ…」

窓の開いた廊下の前、はぁっと息を吐いた駿二先輩が窓際に寄りかかる。

「藍ちゃん、最近奏とどんな感じ?」

「え…」

「話してる?家で」

「えっと…」

あんまり話してない、あの日から。

おはようやおやすみは言うけどそれぐらいで、ご飯の時以外は特に顔を合わせることもなく自分の部屋にこもってたから。

「奏、何かありましたか?」

「んー、何かっていうか、うーん…」

腕を組んで唸るように声を出した。

相当不安げに感じている様子で、私の顔色を伺いながら話し始めた。

「奏…、ちょっと前から上手くギターが弾けないっぽいんだよね」

「え?」

弾けない、そんなこと初めて聞いたから。

小さい頃からずっと楽しそうにギターを弾いてる奏しか見たことがなかったから。