「ここ難しいんだよね~、何度やってもしっくり来なくてノリで弾いてるから」

「そこ結構目立つんですよね、難しいってことは見せ場でもあるのでもっとハッキリ音があった方がいいんじゃないかと思います」 

「ごもっとも」

ふぅっと息を吐きながら駿二先輩がパイプ椅子の背もたれに体をくっ付けた。両手を上にしてんーっと背伸びをして一気に緩めた。

「ふぁ~…ッ、もっとがんばんないとか~!」

「その方がカッコよく聞こえるかと思いますよ」

「そっか、じゃあやるか…せっかくステージもらえてるんだもんな」

「文化祭までもう少し時間もありますし、駿二先輩ならきっと大丈夫じゃないですか」

スマホを開いてスケジュール帳を開いた。 

久野先生が来て、そのあと体育館で演奏出来る日も入ってるから…それまで合同練習より個人練習に時間を注ぐようにしてもっと個々に時間を割いた方がいいかな。時間はあると言っても、これだけやってればいいわけじゃないからね。

「ちょっとそこ重点的にやるかな」

「はい、何かお手伝いすることあったらしますよ」

「うん、ありがと!文化祭って超楽しみだけど緊張するな~!またお腹壊さないようにしないとだな~!」

「駿二先輩、意外と緊張しやすいですよね」

「俺ガヤが向いてるの、注目されるとテンパる!」

ギターを持った駿二先輩が立ち上がった、ジャンなんて効果音を付けて。

「何ですか、それ」

つい笑ってしまって、くすくすと笑う私の方に駿二先輩がくるっと振り返った。

「そーいえば藍ちゃんたちのクラスは文化祭何やるの?」

「え、うちはー…」