「奏くん!ガリガリ君ソーダとコーラどっちがいい?」

「じゃあ、コーラ」

「はいっ」

ガリガリ君コーラ味を差し出して、いつものように隣に座る。


“じゃあ俺も、これから毎日来よ”


本当にあれから毎日来るようになって、たまにしかいないお兄さんが毎日会う奏くんになった。

奏くんがギターを弾く隣でたまに口ずさんで、相変わらず誰も来ない駅前の路上ライブだったけど来ない方がいいなって思ってた。

「灯璃、なんで最近髪結んでないの?」

ガリガリ君を開けた瞬間、奏くんが聞いてくるから手が滑って落とすかと思った。

そう、最近の私はテキトーに束ねていた髪の毛を下ろしてブラッシングまでして来ている。

「あー、あれは…家だと結んでるんだけど、外出るときはこっちが通常なんだよ」

1回ちぎれたゴムを縛り直して使ってたなんて、ちょっとどうなんだろうって思ってゴムを捨てたら他のゴムがなかった。変わらずTシャツ短パンではあるけど。

「そうなんだ。じゃあ、あの灯璃は家でしか見れない灯璃なんだ?」

「うん、まぁそんな感じかな」

めんどくさくて散々あの姿で夜コンビニ行ってたけどね。

でも誰にも会わないと思ってたから、誰も私を知る人なんかいないって思ってたから。

「てことは俺はラッキーだね」

眉を下げて笑いながらガリガリ君をかじった。

そんな笑って言うことでもないと思うんだけど。

だってラッキーでも何でもないよ?
むしろお見苦しい姿を見せられてアンラッキーじゃない?

そんなことを言われた私の方がラッキーだって思ってしまいそう。