アシオンを出てから、朝陽を数えて2回目にイアルグの村に到着した。ナガーは着くなり馬車を止める場所を探しに行った。
ハロルはスーの後ろに付いて、イアルグの村長に会いに行った。村長と言っても、生き残りの中で最も年長だと言うだけで、村を収めるにはまだ若い。
「アシオンからわざわざご苦労様。もし今日ここに泊まって行くつもりなら、この村を再建するために国が建てた簡易居住施設がまるっと空いているから、そこを使ってくれりゃあいい。それと、夜は野犬が出るから絶対外に出ないように頼む」
「ありがとうございます」
スーは村長に自分と弟子を紹介した。ハロルと言う名前を聞いたとき、村長の表情が変わり、顔を覗き込まれた。
「ん? なんだ?」
「……あ、いや。人違いだ」
「この村にもハロルと言う名の子が?」
スーが村長に問いかけると、頷いた。
「この村が火事になったときにいなくなっちまったが……どっちかといやあハロルじゃあなくてドリシエに似てるな。ああ、ドリシエってのもその日に居なくなった子供だ。そう言えば、アンタが探している羽の生えた黒いトカゲだが、この村を焼いたのも同じ姿だったと聞いたことがある」
ドリシエ。初めて聞く言葉だ。だがどこかで聞いたことがあるような、ハロルの頭の端の方に靄が掛かり始める。
村長の言葉にミーンは、ポンと手を叩く。
「それってドラゴンって言うんだよね」
「ドラゴン?」
耳慣れない言葉に、ハロルが首を傾げた。
「よく知っていますね」
「お師匠さまの書斎にあった本に書いてあったの。鱗を纏ったトカゲのような体躯に、大きな翼をもつ生き物。それがドラゴンだって」
えっへんと胸を反らす。
「素晴らしいですね、ミーン。ハロルも見倣ってくださいね」
ハロルはむくれて下唇を尖らせた。
「もしもこの村にまだハロルとドリシエが居るってんなら、犯人はそいつらだって言えるんだがな。6年前の火事以降、姿を見てない。そう言うわけで、ちょっと力になれそうもない。すまないな」
ドリシエ、火事、ドラゴン、犯人……。自分の中に在る記憶のピースが揃いそうで揃わず、パズルがぐしゃぐしゃと崩れていく。頭の中を掻き回されるような感覚に襲われ、ハロルは顔を顰めた。
「ぐっ……!」
さらに激痛が走る。あの、花壇の前で炎を見たときと同じ、稲妻のごとき痛み。頭の内側に出来たカサブタを無理矢理剥がされるような。
耐えられず、ハロルはその場に倒れ込んでしまった。
ハロルは名前を呼ばれた気がしたが、返事をすることも出来ず、遠退く意識を他人事のように傍観するしかなかった。
ハロルはスーの後ろに付いて、イアルグの村長に会いに行った。村長と言っても、生き残りの中で最も年長だと言うだけで、村を収めるにはまだ若い。
「アシオンからわざわざご苦労様。もし今日ここに泊まって行くつもりなら、この村を再建するために国が建てた簡易居住施設がまるっと空いているから、そこを使ってくれりゃあいい。それと、夜は野犬が出るから絶対外に出ないように頼む」
「ありがとうございます」
スーは村長に自分と弟子を紹介した。ハロルと言う名前を聞いたとき、村長の表情が変わり、顔を覗き込まれた。
「ん? なんだ?」
「……あ、いや。人違いだ」
「この村にもハロルと言う名の子が?」
スーが村長に問いかけると、頷いた。
「この村が火事になったときにいなくなっちまったが……どっちかといやあハロルじゃあなくてドリシエに似てるな。ああ、ドリシエってのもその日に居なくなった子供だ。そう言えば、アンタが探している羽の生えた黒いトカゲだが、この村を焼いたのも同じ姿だったと聞いたことがある」
ドリシエ。初めて聞く言葉だ。だがどこかで聞いたことがあるような、ハロルの頭の端の方に靄が掛かり始める。
村長の言葉にミーンは、ポンと手を叩く。
「それってドラゴンって言うんだよね」
「ドラゴン?」
耳慣れない言葉に、ハロルが首を傾げた。
「よく知っていますね」
「お師匠さまの書斎にあった本に書いてあったの。鱗を纏ったトカゲのような体躯に、大きな翼をもつ生き物。それがドラゴンだって」
えっへんと胸を反らす。
「素晴らしいですね、ミーン。ハロルも見倣ってくださいね」
ハロルはむくれて下唇を尖らせた。
「もしもこの村にまだハロルとドリシエが居るってんなら、犯人はそいつらだって言えるんだがな。6年前の火事以降、姿を見てない。そう言うわけで、ちょっと力になれそうもない。すまないな」
ドリシエ、火事、ドラゴン、犯人……。自分の中に在る記憶のピースが揃いそうで揃わず、パズルがぐしゃぐしゃと崩れていく。頭の中を掻き回されるような感覚に襲われ、ハロルは顔を顰めた。
「ぐっ……!」
さらに激痛が走る。あの、花壇の前で炎を見たときと同じ、稲妻のごとき痛み。頭の内側に出来たカサブタを無理矢理剥がされるような。
耐えられず、ハロルはその場に倒れ込んでしまった。
ハロルは名前を呼ばれた気がしたが、返事をすることも出来ず、遠退く意識を他人事のように傍観するしかなかった。