ウォルクさんのお店でたくさんのお金を頂いてしまい、更にお店を案内していただくことになりましたがこれで買い物も楽に進むでしょう。
ウォルクさんがまず向かっているお店は種や苗などが売っているお店とのこと。
一本裏通りに入ったお店ですが清潔に保たれたお店です。
いい店主であればいいのですが。
「女将、いますかな?」
「いるよ。ウォルクじゃないか。どうしたんだい? ここはあんたのお店とは違うよ?」
「今日は上客の案内です。こちら、ドワーフの匠、ベニャト様。そして、その案内役のシント様にリン様です」
「ドワーフの匠が種苗店に? なんの用だい?」
「初めましてだな、女将さん。名はなんという?」
「女将で十分だよ。どこでもその名前で通っている。それで、酒好きのドワーフが種苗店に来た理由は?」
「うむ。俺が拠点にしている場所は肥沃な土地が余っているのだ。しかし、酒がなくてな。自力で酒を造ろうと思い立ったのだよ」
「なるほど。話は読めたよ。酒の原料になる種や苗を買っていきたいんだね?」
「そうなる。取り扱っているかな?」
「取り扱っているが……ドワーフの匠ならひとつお願いを聞いちゃもらえないかい?」
「ん? 聞ける話と聞けない話があるぞ?」
「まあ、急ぐ話でもないし、無理なら断ってくれてもいいよ。ララ、こっちにきな!」
「なんでしょう、お義母さん?」
店の奥からやってきたのはひとりの女性。
ただ、お腹が大きくなっていますね。
「こいつは家の馬鹿息子の嫁に来てくれた娘のララって言う。馬鹿息子にはもったいないくらいいい娘でね。この子に見合ったアクセサリーをひとつ用意しちゃくれないかい?」
「なんだ、そんなことか。お安いご用だ。ウォルク殿の店で断られたアクセサリーになるがよろしいか?」
「ああ、気にしないよ。なんになる?」
「ミスリルのネックレスだ。ペンダントトップにアクアマリンやローズクォーツを使っている。ちょいとばかり目立つ代物だが普段は服の中に隠して歩けば物盗りにもあわんじゃろ。それで手を打たんか?」
「いや、言い出したのはあたしだけど……そんなものもらっちまってもいいのかい?」
「俺にとっては余り物だ。有効活用してくれる者がいればそいつに渡す。つーわけでこいつがそのネックレスだ。受け取ってくれ」
「あいよ。ララ、いまからこれはあんたのものだ。身につけてみな」
「は、はい。……あ、なんだか暖かい」
「まあ、ドワーフの匠が本気になり宝石の純度まで選んで作った逸品よ。ときどき磨いてやれば輝きが消えることもない。その体型からして子供もできているんだろう? 子供のためにも体は大切にしてやんな」
「ありがとうございます!」
「ララ、あんたはもう家の方に行きな。すっころんでお腹の子供に悪影響がないように気をつけるんだよ」
「はい、お義母さん。ありがとうございました」
「気にすんな。こっちはこっちで話をつけておくからさ」
「ドワーフの方もありがとうございます。必ず元気な子供を産んでみせます」
「ああ。大変だろうが頑張ってくれ」
「はい!」
それだけ言い残すとララさんは店の奥へと消えていきました。
横を見るとリンがうらやましそうな顔をしていましたが……子供はまだ早いですよ?
メイヤの許可が出ていませんし。
「さて、世話になっちまったね。なんの種がほしい? あたしがプレゼントするよ。あんな立派なアクセサリーとの釣り合いが取れないけどね」
「だめだ。俺があのアクセサリーを贈ったのはあの娘が善良だと感じたからでしかない。種や苗の代金は別に支払う」
「……ドワーフは頑固だって聞くし私が折れるっきゃないね。それで、作りたい酒は?」
「エールにワインだな。そこからブランデーやウィスキーも作る」
「ってことはエールだとホップの苗に大麦の種、ワインはブドウの種だね。全部揃ってるけど育てる時期はまるで違うよ? 大丈夫かい?」
「まあ、そこはなんとかなるじゃろ。ある程度の数を買いたいが大丈夫か?」
「この季節ならうちにある在庫の半分以上を買って行ってもらっても構わないさ。育て方はわかるかい?」
「田舎に帰れば詳しい者がいる。申し訳ないがそちらを頼らせてもらうことにするわい」
「わかった。いま用意するから待ってな」
女将は店の中を歩き回るといくつかの小袋を用意してくれてベニャトの前に持ってきました。
ですが、ベニャトが頼んだ種類よりも明らかに多いような?
「これがうちで扱っているホップの苗に大麦の種、ワインの種の全種類だよ。エールを作るのもワインを作るのも品種によって味が変わる。種が混じらないように気をつけて持ち帰りな」
「何から何まで助かる。お題は……金貨1枚で足りるか?」
「もらいすぎだがそこも譲っちゃくれないだろうね。ありがたく金貨1枚、受け取るよ」
「こちらこそいろいろと知識をもらって助かった。酒の造り方までは知っていたが原材料で味が変わることまでは知らなかったからな!」
「そうか。ウォルク、次はどこを案内するんだい?」
「スプリツオを。珍しい酒をほしいそうなので」
「確かに。あそこなら珍しい酒も揃っているだろうね。貴重品は高いけれど大丈夫かい?」
「貴重品まで買っていくつもりはない。変わった味の酒が飲みたいのだ」
「そりゃあいい。試しに作ったはいいが売れずに困っている酒もたくさんあるはずだからね」
「ええ。お気に召してくれるといいのですが」
「酒の味にはうるさいが、変わった味の酒というのはとても気になる。シント、リン、お前たちも飲んでみるか?」
「僕は遠慮しておきます。護衛も兼ねているので」
「私も飲まないよ。お酒ってよくわからないもの」
そこまで話したところウォルクさんも女将さんも不思議そうな顔をして僕の顔をのぞき込みました。
なにか変な話をしたでしょうか?
「失礼ながら、シント様の年齢はお幾つで?」
「14歳です。それがなにか?」
「この国じゃ15歳までは飲酒禁止だよ。成人が15歳だからね」
「そうなんですね。僕のいた国では13歳だったので……」
「13歳で成人……質問を重ねてしまいますがジニ王国の出身で?」
「はい。まずかったでしょうか?」
「いえ、まずくはありません。ただ……あの国はいろいろ酷かった」
「そうなんですか? 僕は辺境にある田舎村出身でこの国まで流れ着いた放浪者なのでよくわからないのですが」
「出身国を悪く言いたくはないのですが……若い頃、あの国に宝飾品を売りに行ったとき、貴族どもは横暴にも私の持っていった宝飾品をすべて奪い取り屋敷から追い出されましたよ。まったくもって酷い国だ。13歳が成人というのも若いうちから徴兵できるようにするためだとか」
「あはは……僕はあの国を追い出された身なので気にしません。ですが、そこまで横暴でしたか」
「はい。あの国を捨てて正解でしたな」
「まったくだよ。いまはそっちの嬢ちゃんと仲良くやっている様子だ。幸せにおなりよ」
「ええ。リンも辛い経験をして生きてきた身です。これ以上、不幸な目にはあわせません」
「シントだって一緒でしょ? 私もシントが辛い目にあうのは嫌だよ?」
「本当に仲が良くて結構だね。これからも大変だろうけど仲良く過ごしていきな」
「そうなさってください。まさか、そこまで辛い経験をしてきた方々だとはつゆ知らず、ご無礼をいたしました」
「いえ。いまの僕たちはベニャトの護衛と道案内ですから」
「うん。いまは幸せだから気にしないで」
「では、そうさせていたしましょう。女将、これで失礼いたします」
「ああ。そっちの気のいいふたりもなにかほしい種苗があったらきな。おまけしてあげるよ」
どうやら僕たちまで気に入られてしまったようですね。
ただの護衛ですませたかったのですが、年齢から出身国がばれるとは思いもしませんでした。
それにしてもジニ王国とはそこまで酷かったんですね。
あのまま滅びてくれればいいのですが。
ウォルクさんがまず向かっているお店は種や苗などが売っているお店とのこと。
一本裏通りに入ったお店ですが清潔に保たれたお店です。
いい店主であればいいのですが。
「女将、いますかな?」
「いるよ。ウォルクじゃないか。どうしたんだい? ここはあんたのお店とは違うよ?」
「今日は上客の案内です。こちら、ドワーフの匠、ベニャト様。そして、その案内役のシント様にリン様です」
「ドワーフの匠が種苗店に? なんの用だい?」
「初めましてだな、女将さん。名はなんという?」
「女将で十分だよ。どこでもその名前で通っている。それで、酒好きのドワーフが種苗店に来た理由は?」
「うむ。俺が拠点にしている場所は肥沃な土地が余っているのだ。しかし、酒がなくてな。自力で酒を造ろうと思い立ったのだよ」
「なるほど。話は読めたよ。酒の原料になる種や苗を買っていきたいんだね?」
「そうなる。取り扱っているかな?」
「取り扱っているが……ドワーフの匠ならひとつお願いを聞いちゃもらえないかい?」
「ん? 聞ける話と聞けない話があるぞ?」
「まあ、急ぐ話でもないし、無理なら断ってくれてもいいよ。ララ、こっちにきな!」
「なんでしょう、お義母さん?」
店の奥からやってきたのはひとりの女性。
ただ、お腹が大きくなっていますね。
「こいつは家の馬鹿息子の嫁に来てくれた娘のララって言う。馬鹿息子にはもったいないくらいいい娘でね。この子に見合ったアクセサリーをひとつ用意しちゃくれないかい?」
「なんだ、そんなことか。お安いご用だ。ウォルク殿の店で断られたアクセサリーになるがよろしいか?」
「ああ、気にしないよ。なんになる?」
「ミスリルのネックレスだ。ペンダントトップにアクアマリンやローズクォーツを使っている。ちょいとばかり目立つ代物だが普段は服の中に隠して歩けば物盗りにもあわんじゃろ。それで手を打たんか?」
「いや、言い出したのはあたしだけど……そんなものもらっちまってもいいのかい?」
「俺にとっては余り物だ。有効活用してくれる者がいればそいつに渡す。つーわけでこいつがそのネックレスだ。受け取ってくれ」
「あいよ。ララ、いまからこれはあんたのものだ。身につけてみな」
「は、はい。……あ、なんだか暖かい」
「まあ、ドワーフの匠が本気になり宝石の純度まで選んで作った逸品よ。ときどき磨いてやれば輝きが消えることもない。その体型からして子供もできているんだろう? 子供のためにも体は大切にしてやんな」
「ありがとうございます!」
「ララ、あんたはもう家の方に行きな。すっころんでお腹の子供に悪影響がないように気をつけるんだよ」
「はい、お義母さん。ありがとうございました」
「気にすんな。こっちはこっちで話をつけておくからさ」
「ドワーフの方もありがとうございます。必ず元気な子供を産んでみせます」
「ああ。大変だろうが頑張ってくれ」
「はい!」
それだけ言い残すとララさんは店の奥へと消えていきました。
横を見るとリンがうらやましそうな顔をしていましたが……子供はまだ早いですよ?
メイヤの許可が出ていませんし。
「さて、世話になっちまったね。なんの種がほしい? あたしがプレゼントするよ。あんな立派なアクセサリーとの釣り合いが取れないけどね」
「だめだ。俺があのアクセサリーを贈ったのはあの娘が善良だと感じたからでしかない。種や苗の代金は別に支払う」
「……ドワーフは頑固だって聞くし私が折れるっきゃないね。それで、作りたい酒は?」
「エールにワインだな。そこからブランデーやウィスキーも作る」
「ってことはエールだとホップの苗に大麦の種、ワインはブドウの種だね。全部揃ってるけど育てる時期はまるで違うよ? 大丈夫かい?」
「まあ、そこはなんとかなるじゃろ。ある程度の数を買いたいが大丈夫か?」
「この季節ならうちにある在庫の半分以上を買って行ってもらっても構わないさ。育て方はわかるかい?」
「田舎に帰れば詳しい者がいる。申し訳ないがそちらを頼らせてもらうことにするわい」
「わかった。いま用意するから待ってな」
女将は店の中を歩き回るといくつかの小袋を用意してくれてベニャトの前に持ってきました。
ですが、ベニャトが頼んだ種類よりも明らかに多いような?
「これがうちで扱っているホップの苗に大麦の種、ワインの種の全種類だよ。エールを作るのもワインを作るのも品種によって味が変わる。種が混じらないように気をつけて持ち帰りな」
「何から何まで助かる。お題は……金貨1枚で足りるか?」
「もらいすぎだがそこも譲っちゃくれないだろうね。ありがたく金貨1枚、受け取るよ」
「こちらこそいろいろと知識をもらって助かった。酒の造り方までは知っていたが原材料で味が変わることまでは知らなかったからな!」
「そうか。ウォルク、次はどこを案内するんだい?」
「スプリツオを。珍しい酒をほしいそうなので」
「確かに。あそこなら珍しい酒も揃っているだろうね。貴重品は高いけれど大丈夫かい?」
「貴重品まで買っていくつもりはない。変わった味の酒が飲みたいのだ」
「そりゃあいい。試しに作ったはいいが売れずに困っている酒もたくさんあるはずだからね」
「ええ。お気に召してくれるといいのですが」
「酒の味にはうるさいが、変わった味の酒というのはとても気になる。シント、リン、お前たちも飲んでみるか?」
「僕は遠慮しておきます。護衛も兼ねているので」
「私も飲まないよ。お酒ってよくわからないもの」
そこまで話したところウォルクさんも女将さんも不思議そうな顔をして僕の顔をのぞき込みました。
なにか変な話をしたでしょうか?
「失礼ながら、シント様の年齢はお幾つで?」
「14歳です。それがなにか?」
「この国じゃ15歳までは飲酒禁止だよ。成人が15歳だからね」
「そうなんですね。僕のいた国では13歳だったので……」
「13歳で成人……質問を重ねてしまいますがジニ王国の出身で?」
「はい。まずかったでしょうか?」
「いえ、まずくはありません。ただ……あの国はいろいろ酷かった」
「そうなんですか? 僕は辺境にある田舎村出身でこの国まで流れ着いた放浪者なのでよくわからないのですが」
「出身国を悪く言いたくはないのですが……若い頃、あの国に宝飾品を売りに行ったとき、貴族どもは横暴にも私の持っていった宝飾品をすべて奪い取り屋敷から追い出されましたよ。まったくもって酷い国だ。13歳が成人というのも若いうちから徴兵できるようにするためだとか」
「あはは……僕はあの国を追い出された身なので気にしません。ですが、そこまで横暴でしたか」
「はい。あの国を捨てて正解でしたな」
「まったくだよ。いまはそっちの嬢ちゃんと仲良くやっている様子だ。幸せにおなりよ」
「ええ。リンも辛い経験をして生きてきた身です。これ以上、不幸な目にはあわせません」
「シントだって一緒でしょ? 私もシントが辛い目にあうのは嫌だよ?」
「本当に仲が良くて結構だね。これからも大変だろうけど仲良く過ごしていきな」
「そうなさってください。まさか、そこまで辛い経験をしてきた方々だとはつゆ知らず、ご無礼をいたしました」
「いえ。いまの僕たちはベニャトの護衛と道案内ですから」
「うん。いまは幸せだから気にしないで」
「では、そうさせていたしましょう。女将、これで失礼いたします」
「ああ。そっちの気のいいふたりもなにかほしい種苗があったらきな。おまけしてあげるよ」
どうやら僕たちまで気に入られてしまったようですね。
ただの護衛ですませたかったのですが、年齢から出身国がばれるとは思いもしませんでした。
それにしてもジニ王国とはそこまで酷かったんですね。
あのまま滅びてくれればいいのですが。