した。遅刻をするような人ではなかったので、なんとなく嫌な予感を感じました。
その予感が的中して、昼食時間に担任の先生から亡くなったのだと知らされました。向こうの両親が、僕に伝えてほしいと電話を掛けてきたそうです。通学途中にトラックに撥ねられたそうで、救急車で運ばれた後、病院で息を引き取りました」
「そうだったんですか……。ご愁傷様です」
男はそれまでの笑みを消し去って頭を下げた。何を言っていいか分からなかったので、とりあえず僕も頭を下げた。
若い男は言った。
「すみませんでした。僕は、ただ自分が楽しむためにこの島まで来たんです。久しぶりの旅行だからと、感情が高揚してしまっていて……軽率でした」
「旅行ならそうなるのが自然です。僕の方も、本来なら飛行機に飛び乗ったりしている場合ではないんです」
しばらくの間、車内には思い沈黙が乗しかかった。
停留所を二つ通過した頃、若い男の方が先に口を開いた。
「でも、どうしてここなんですか? 勢い任せに飛び出すにしてはお金がいる。彼女さんとの何か、思い出があるとか?」
「年が明けたら、二人で旅行に行こうって計画を立ててたんです。三年生になったら受験もあるから、二年のうちに行こうと相手が言い出しました。バイトでお金も貯めてて……だから、突然飛行機に乗る事になっても金銭的な痛手とはならなかったんです」
男は「そうだったんですね」とだけ返して、再び黙り込んだ。僕も、かつての恋人の姿が脳裏に浮かんできて、何も言えなくなった。強気で、いつも僕を引っ張ってくれるような存在だった。
彼女は夏海という名だった。勇気を振り絞って、僕の方から告白をした。一年生の頃同じクラスで、元々それなりに仲が良かった。授業中にくだらない話をして笑い合ったり、放課後は何人かのクラスメイトと共に教室でスマホゲームに熱中した。
二年生になって教室が別々になってから、自分の気持ちに気がついたのだ。僕はあの人に恋をしているのだと。
連絡先は既に交換していたから、何度か向こうにメッセージを送った。どう思われるかとヒヤヒヤしていたが、友好的な文面が僕の元へ返ってきた。
僕との関わりが途切れていないのだと安心した。それからは、何か話題を見つける度夏海にメッセージを送った。
普段の僕にしてみれば、柄にもない事をしたものだと思う。だがその甲斐あって、彼女とは廊下ですれ違う度挨拶を交わし、時には雑談をする関係になった。
その予感が的中して、昼食時間に担任の先生から亡くなったのだと知らされました。向こうの両親が、僕に伝えてほしいと電話を掛けてきたそうです。通学途中にトラックに撥ねられたそうで、救急車で運ばれた後、病院で息を引き取りました」
「そうだったんですか……。ご愁傷様です」
男はそれまでの笑みを消し去って頭を下げた。何を言っていいか分からなかったので、とりあえず僕も頭を下げた。
若い男は言った。
「すみませんでした。僕は、ただ自分が楽しむためにこの島まで来たんです。久しぶりの旅行だからと、感情が高揚してしまっていて……軽率でした」
「旅行ならそうなるのが自然です。僕の方も、本来なら飛行機に飛び乗ったりしている場合ではないんです」
しばらくの間、車内には思い沈黙が乗しかかった。
停留所を二つ通過した頃、若い男の方が先に口を開いた。
「でも、どうしてここなんですか? 勢い任せに飛び出すにしてはお金がいる。彼女さんとの何か、思い出があるとか?」
「年が明けたら、二人で旅行に行こうって計画を立ててたんです。三年生になったら受験もあるから、二年のうちに行こうと相手が言い出しました。バイトでお金も貯めてて……だから、突然飛行機に乗る事になっても金銭的な痛手とはならなかったんです」
男は「そうだったんですね」とだけ返して、再び黙り込んだ。僕も、かつての恋人の姿が脳裏に浮かんできて、何も言えなくなった。強気で、いつも僕を引っ張ってくれるような存在だった。
彼女は夏海という名だった。勇気を振り絞って、僕の方から告白をした。一年生の頃同じクラスで、元々それなりに仲が良かった。授業中にくだらない話をして笑い合ったり、放課後は何人かのクラスメイトと共に教室でスマホゲームに熱中した。
二年生になって教室が別々になってから、自分の気持ちに気がついたのだ。僕はあの人に恋をしているのだと。
連絡先は既に交換していたから、何度か向こうにメッセージを送った。どう思われるかとヒヤヒヤしていたが、友好的な文面が僕の元へ返ってきた。
僕との関わりが途切れていないのだと安心した。それからは、何か話題を見つける度夏海にメッセージを送った。
普段の僕にしてみれば、柄にもない事をしたものだと思う。だがその甲斐あって、彼女とは廊下ですれ違う度挨拶を交わし、時には雑談をする関係になった。