「ただいま」

 私にだけ聴こえる『おかえり』にすこし寂しくなる。
写真の中の彼は、変わらず優しく笑っていて切ない。
私はずっと、彼の死を受け入れたつもりでいた。いつか来る『またね』を信じて。
ここから先は私が、彼がみることのできなかった世界をみたい。
大人になって、笑って、遊んで、疲れて、寝そべって、皺を増やして、それでも絶えずに笑っていたい。
そして私が数十年後、彼のいる世界へいった時に果たせずにいる『またね』を交わしたい。
だからそれまで、私は私を生きることを誓う。


『じゃあね、志貴。また逢う瞬間(とき)まで』