またか……。
半日以上の意識の空白。その理由を奏多は知っている。
また、俺、余計なことをしていないよな。
その空虚な問いに、先程のような『破滅の創世』としての返事は返ってこない。
とはいえ、宿舎周辺には、奏多が『破滅の創世』として覚醒したことによる被害と思われるものは見当たらなかった。
「結愛、母さん、どうかしたのか?」
「はううっ、奏多くんがいつの間にか元に戻っていますよ」
奏多の戸惑いに元気の良い返事が返ってくる。結愛の食いつきが半端ない。
「奏多くん、実はですね……」
奏多は改めて、結愛から自身の身に起きた現象と改めて記憶の再封印が施されたことを伝えられる。
「そんなことが……」
「奏多様、記憶の再封印が成功して何よりです。これで『破滅の創世』の配下達がカードを用いてきても、奏多様が『破滅の創世』様の記憶を完全に取り戻すことはないでしょう」
戸惑いを滲ませる奏多の様子に反して、一族の上層部の者達は歓喜で打ち震える。
『破滅の創世』の配下達が動き出す前に先手を取れた。これを喜ばずしてなんとしようか。
「では、我々は拠点に戻ります。また、何かありましたら、すぐに奏多様のもとへ駆けつけますので」
一族の上層部の者達はそう言い残すと、宿舎から去っていった。
「何かあったら、か……」
一族の上層部の者達の最後の言葉は、奏多の瞳を揺らがせるのに十分すぎた。
そこに奏多の母親が躊躇うようにいそいそと近づいてくる。
「奏多、あのね……」
「母さん……?」
様子を窺うような奏多の母親の声音。奏多は不思議そうに目を瞬く。
「これからどんなことがあっても、あなたは私達の息子だから……。どうか……それを忘れないで……」
奏多の母親は愛しそうに奏多を優しく抱きしめた。
「大丈夫です! 奏多くんのお母さん、大丈夫ですよ! きっと……これからも奏多くんは奏多くんのままです!」
結愛が先を促すように言葉を重ねたのは、奏多の母親がどこか不安そうな表情を浮かべていたためである。
「ほらほら、私の予感は当たるんです。だから大丈夫です!」
「……そうね」
思いの丈をぶつける結愛の様子を見て、奏多の母親は表情を和らげた。
「奏多くんはこれからも奏多くんのままですよ」
「約束の力は無限大だからな」
全てを包み込むような温かな光景は、張り詰めていた奏多の心を優しく解きほぐす。
「ふふ、言いましたね、約束の力は無限大ですよ!」
忘れることのない約束は、二人の間に今も確かに。
あとどれ程、奏多と共にいられるのかは分からない。
それでも、もしも叶うのならば――その最後の一時まで。
隣にいることが出来たらと……結愛は願わざるを得ないものであった。
半日以上の意識の空白。その理由を奏多は知っている。
また、俺、余計なことをしていないよな。
その空虚な問いに、先程のような『破滅の創世』としての返事は返ってこない。
とはいえ、宿舎周辺には、奏多が『破滅の創世』として覚醒したことによる被害と思われるものは見当たらなかった。
「結愛、母さん、どうかしたのか?」
「はううっ、奏多くんがいつの間にか元に戻っていますよ」
奏多の戸惑いに元気の良い返事が返ってくる。結愛の食いつきが半端ない。
「奏多くん、実はですね……」
奏多は改めて、結愛から自身の身に起きた現象と改めて記憶の再封印が施されたことを伝えられる。
「そんなことが……」
「奏多様、記憶の再封印が成功して何よりです。これで『破滅の創世』の配下達がカードを用いてきても、奏多様が『破滅の創世』様の記憶を完全に取り戻すことはないでしょう」
戸惑いを滲ませる奏多の様子に反して、一族の上層部の者達は歓喜で打ち震える。
『破滅の創世』の配下達が動き出す前に先手を取れた。これを喜ばずしてなんとしようか。
「では、我々は拠点に戻ります。また、何かありましたら、すぐに奏多様のもとへ駆けつけますので」
一族の上層部の者達はそう言い残すと、宿舎から去っていった。
「何かあったら、か……」
一族の上層部の者達の最後の言葉は、奏多の瞳を揺らがせるのに十分すぎた。
そこに奏多の母親が躊躇うようにいそいそと近づいてくる。
「奏多、あのね……」
「母さん……?」
様子を窺うような奏多の母親の声音。奏多は不思議そうに目を瞬く。
「これからどんなことがあっても、あなたは私達の息子だから……。どうか……それを忘れないで……」
奏多の母親は愛しそうに奏多を優しく抱きしめた。
「大丈夫です! 奏多くんのお母さん、大丈夫ですよ! きっと……これからも奏多くんは奏多くんのままです!」
結愛が先を促すように言葉を重ねたのは、奏多の母親がどこか不安そうな表情を浮かべていたためである。
「ほらほら、私の予感は当たるんです。だから大丈夫です!」
「……そうね」
思いの丈をぶつける結愛の様子を見て、奏多の母親は表情を和らげた。
「奏多くんはこれからも奏多くんのままですよ」
「約束の力は無限大だからな」
全てを包み込むような温かな光景は、張り詰めていた奏多の心を優しく解きほぐす。
「ふふ、言いましたね、約束の力は無限大ですよ!」
忘れることのない約束は、二人の間に今も確かに。
あとどれ程、奏多と共にいられるのかは分からない。
それでも、もしも叶うのならば――その最後の一時まで。
隣にいることが出来たらと……結愛は願わざるを得ないものであった。