「彼女達とはやっぱり、どこかで会ったことがあるような気がする……」

胸から溢れる気持ちをそのままに。
それは奏多が零した確かな想いの吐露であった。
その時、インターフォンが鳴り響く。

「誰か来たのか?」

奏多は部屋に鳴り響いたインターホンの音に意識を傾ける。

「あら? 誰かしら?」

奏多の母親が応答するため、インターホンがある部屋へと向かう。
そして、奏多の母親は揺らぐことのない声で問いかけた。

「……はい、どなたですか?」
「突然、お邪魔してしまって申し訳ございません。奏多様にお話したいことがあります」

インターホンから、一族の上層部の者と思われる声が聞こえてきた。
奏多は奏多の母親に連れられて、玄関へと赴く。
そして玄関へと向かうと、ドアを開けて一族の上層部の者達を出迎える。

「奏多様。今回の冬城聖花の件を受けて、記憶を再封印する手立てを整えて参りました」

そこには一族の上層部の者達だけではなく、此ノ里家の者達がいた。

「奏多くん!」
「結愛……!」

疑問に思う中、奏多はその場に結愛がいることに気づいた。
観月は他の任務についているのか、この場にはいない。

「これって一体……」
「よく分からないのですが、もう一度、奏多くんの記憶を再封印しなくちゃいけないみたいです」

奏多の疑問に、結愛は置かれた状況を説明する。

「その通りです」

そう前置きして、一族の上層部から告げられた奏多の『破滅の創世』としての記憶を再封印する理由はあまりにも重すぎた。
この世界のみならず、多世界全てを巻き込んでしまう火種となりかねぬほどに。

「『破滅の創世』と……」
「……ほええ、『破滅の創世』様の配下さん達の怒り?」

思わぬ事実を前にして、奏多と結愛は言葉が出なかった。
『破滅の創世』の配下達が手に入れた『破滅の創世』の記憶のカード。
その記憶のカードの中には、一族の上層部が犯した罪過への『破滅の創世』の憤懣がある。
ましてやそれが延々と折り重ねった憎しみに起因するものであるならば、もはや激昂に近いかもしれない。
『破滅の創世』である奏多であればこそ、その怒りを身に染みるほどに理解している。
完全に神の記憶を取り戻せば、何度も神としての憤りに――絶望視した過去に囚われてしまうかもしれない。
そして――

「『破滅の創世』の配下達は我々、一族の者だけではなく、この世界全ての者を許さないでしょう。奏多様が神の記憶を取り戻せば、間違いなくこの世界は滅びます」

一族の上層部という存在と決して交わることがないもの。
『破滅の創世』の配下と呼ばれる者達は一族の者共々、この世界を破壊し、『破滅の創世』の神の権能を取り戻そうとしている。
『破滅の創世』の記憶のカードを手に入れた彼らは、奏多が『破滅の創世』としての記憶を完全に取り戻した後、奏多の安全を確保した上でこの世界を滅ぼすだろう。