「『破滅の創世』様に目を付けて、私欲のために利用しようとしている愚か者達」
「ちっ、『破滅の創世』の配下の奴らか。いつの間に接近しやがったんだ……」

銃を構えた慧の反応も想定どおりだったというように、少女達の表情は変わらない。
『破滅の創世』の配下である少女達。
彼女達が『破滅の創世』である奏多ではなく、自分達に接触してきた狙いが何かは分からない。だが、その身の内からは……強大なる滅びの因子を感じる。
その上、先程まで居並んでいた浅湖家の者達の姿がない。
少女達によって、どこか別の場所に転移させられた可能性があった。

「悪いな、観月。話の続きは戦ってからだ……!」

事態を重く見た慧は即座に銃口を前方の少女達に向けて発砲する。
焦りもない。
怯えもない。
正確無比な射撃で、慧はただ眼前の敵達を撃ち抜いた。
『冠位魔撃者』、彼にその名が献ぜられた理由の半分は卓越した銃さばきにある。
だが――晴れた煙幕の向こうで展開していた光景は彼の想像を超えていた。
銃弾は一つとして、まともに標的に着弾していない。

「愚かなものだ。このようなものでわたし達を倒せると思っているとは」

口にすれば、それ相応の苛立ちと嫌悪がにじみ出てくる。
少女達は何事もなかったように慧を見据えていた。

「まぁ、この程度じゃ足止めにもならねえか」

慧は静かに呼気を吐きだした。
この際、少女達に関する疑問は後回しだ。
問題なのは彼女達が周囲の者を無差別に攻撃する可能性が高いという点である。
恐らく誰も彼もを『破滅の創世』を害する者、と認識しているだろう。
もしくは『破滅の創世』である奏多の出方が分からないから、まずは周囲の者を根絶やしにしようと思ったのかもしれない。

「観月、援護頼むぜ!」

慧は距離を取って、続けざまに四発の銃弾を放った。
弾は寸分違わず、少女達に命中するが、すぐに塵のように消えていく。

「まるで彼女達に触れる前に霧散しているみたいね」

少なくとも観月が畏怖に値する敵ではあった。
躊躇していては危険だと即断させる力を秘めていた。

「慧、加勢するわ!」

『破滅の創世』の配下二人を、慧一人で相手取るには銃だけでは危険すぎる。
だからこそ、観月はカードを操り、約定を導き出す。

「降り注ぐは星の裁き……!」

その刹那、立ちはだかる少女達へ無数の強大な岩が流星のごとく降り注ぐ。
此ノ里家の者は封印する力を持つが、それは何も記憶だけではない。
膨大な巨岩をカードに封印すれば、それを解放して放つことができた。
封印するものによって威力は異なるが、その爆発力は目を見張るものがある。
だが――