「まぁ、そういうことだ。観月、奏多を護るためにも……力を貸してくれ!」
慧は強い瞳で観月を見据える。
それは深い絶望に塗れながらも前に進む決意を湛えた眸だった。
一族の上層部の策謀。そして『破滅の創世』の配下達の思惑。何一つ連中の思いどおりなど、させてやるものかと。
「ええ……もちろんよ……」
他に言葉は不要とばかりに、観月は優しい表情を浮かべていた。
二人の誓いはたった一つ。
奏多と結愛を護るためにこの状況を打開すること――一族の上層部の野望を挫くために絶望の未来になる連鎖を断ち切ることだ。
「今のところ、『破滅の創世』の配下達の動きも、一族の上層部側の動きもない。『破滅の創世』の配下達の手の内はまだ探れないのだろうが、撤退したと見せかけた時点で彼女達の動きが変化したとも考えられるな」
司がこれまでの状況から推測を口にする。
「つーか、強奪か。どんな能力なのかは知らないが、『破滅の創世』の配下達の力はどこまでも計り知れねぇな」
「本当ね」
慧と観月は底の知れない『破滅の創世』の配下達の力に改めて畏怖した。
「まぁ、アルリットは忘却の王ヒュムノスと同じく、『破滅の創世』様の幹部の一人だからな」
ひりつく緊張が慧の首元を駆け抜けて行く。
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。
アルリットもまた、『蒼天の王』として、蒼穹の銘を戴く幹部の一人である。
「そういえば、忘却の王ヒュムノスはあの場にはいなかったわね」
そこで観月はヒュムノスがいなかったことに気づき、聖花の拠点があった方向に緊張を走らせた。
「恐らく、他の『破滅の創世』の配下達に先の戦いの報告をしに戻ったんだろうさ」
「報告……。他の『破滅の創世』の配下達も手強そうね」
慧の説明に、透明感のある赤に近い長い髪をなびかせた観月は表情を強張らせる。
既に日常が瓦解してしまった都市。
「『破滅の創世』様の神としての権能の一つである神の加護を一族の上層部が有している今、『破滅の創世』の配下達は同じ地に長時間、留まることはできないわ。でも――」
観月は天を仰ぐ。夜空には今も煌々たる月の光が輝いている。
月明かりの下。降りしきる光が身体を伝って、次第に体温を奪っていく。
「一族の上層部が神の加護を失えば、地の利を生かすことはできないな。とはいえ、奏多の意思も『破滅の創世』様の意思には変わりねぇはずだ。『破滅の創世』の配下の奴らも無理やりにはあいつを奪いに来ないはずだぜ」
慧は一つ一つを紐解くように応えた。
少なくとも今は、『破滅の創世』の配下達は奏多の意思を無視して強引に連れていくことはない。
だからこそ、それを確実に成し遂げるために、奏多の『破滅の創世』としての記憶を完全に取り戻そうとしているのだろう。
神の意志を完遂するために――。
「……っ」
その時、まどかの喘ぐ声が聞こえた。
慧は強い瞳で観月を見据える。
それは深い絶望に塗れながらも前に進む決意を湛えた眸だった。
一族の上層部の策謀。そして『破滅の創世』の配下達の思惑。何一つ連中の思いどおりなど、させてやるものかと。
「ええ……もちろんよ……」
他に言葉は不要とばかりに、観月は優しい表情を浮かべていた。
二人の誓いはたった一つ。
奏多と結愛を護るためにこの状況を打開すること――一族の上層部の野望を挫くために絶望の未来になる連鎖を断ち切ることだ。
「今のところ、『破滅の創世』の配下達の動きも、一族の上層部側の動きもない。『破滅の創世』の配下達の手の内はまだ探れないのだろうが、撤退したと見せかけた時点で彼女達の動きが変化したとも考えられるな」
司がこれまでの状況から推測を口にする。
「つーか、強奪か。どんな能力なのかは知らないが、『破滅の創世』の配下達の力はどこまでも計り知れねぇな」
「本当ね」
慧と観月は底の知れない『破滅の創世』の配下達の力に改めて畏怖した。
「まぁ、アルリットは忘却の王ヒュムノスと同じく、『破滅の創世』様の幹部の一人だからな」
ひりつく緊張が慧の首元を駆け抜けて行く。
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。
アルリットもまた、『蒼天の王』として、蒼穹の銘を戴く幹部の一人である。
「そういえば、忘却の王ヒュムノスはあの場にはいなかったわね」
そこで観月はヒュムノスがいなかったことに気づき、聖花の拠点があった方向に緊張を走らせた。
「恐らく、他の『破滅の創世』の配下達に先の戦いの報告をしに戻ったんだろうさ」
「報告……。他の『破滅の創世』の配下達も手強そうね」
慧の説明に、透明感のある赤に近い長い髪をなびかせた観月は表情を強張らせる。
既に日常が瓦解してしまった都市。
「『破滅の創世』様の神としての権能の一つである神の加護を一族の上層部が有している今、『破滅の創世』の配下達は同じ地に長時間、留まることはできないわ。でも――」
観月は天を仰ぐ。夜空には今も煌々たる月の光が輝いている。
月明かりの下。降りしきる光が身体を伝って、次第に体温を奪っていく。
「一族の上層部が神の加護を失えば、地の利を生かすことはできないな。とはいえ、奏多の意思も『破滅の創世』様の意思には変わりねぇはずだ。『破滅の創世』の配下の奴らも無理やりにはあいつを奪いに来ないはずだぜ」
慧は一つ一つを紐解くように応えた。
少なくとも今は、『破滅の創世』の配下達は奏多の意思を無視して強引に連れていくことはない。
だからこそ、それを確実に成し遂げるために、奏多の『破滅の創世』としての記憶を完全に取り戻そうとしているのだろう。
神の意志を完遂するために――。
「……っ」
その時、まどかの喘ぐ声が聞こえた。