ずっと、どうしたらいいのか迷っていた。
ずっと、何もできなかった。
それでも奏多と結愛に打ち明けたことで、ようやく霧がかかっていた未来の道標がはっきりと輪郭を伴って見えてきた――。
『お姉ちゃん、大丈夫ですよ』
思い出すのは導くような結愛の穏やかな声音。
『私達が『破滅の創世』様の記憶のカードを手に入れたら、一族の上層部さんはきっと神の加護を容易に行使できなくなります。それに『破滅の創世』様の記憶を取り戻した奏多くんとも分かち合えます』
……そう、頼るのは寄りかかることではなく、こんな風にみんなと『分かち合う』こと。
『たとえが結愛らしいな』
『えへへ……奏多くんが奏でる演奏、最高です』
あの時、奏多の穏やかな声音に、結愛が勇気づけられたように。
時に頼って、時に頼られて。
互いに背負ったものを預け合い、共に生きていくことなのだ。
結愛、奏多様、慧、司。
不安なことがあったら、これからも頼らせて、ね。
観月は改めて、自らの偽りのない本音を自覚した。
「――たとえ、まどかが行く手を遮ってきても、私達は必ず『破滅の創世』様の記憶のカードを手に入れてみせる……」
拳を握り締めた観月は手加減はしないと意を決する。
かつての傷跡は気付けば、随分と保全されたものだ。
夜空を見上げれば、あの日のまどかと対立した光景が浮かぶようで。
隣に立っている奏多と結愛も、背後に立つ慧と司も。
今日を生きる者達は過去を越えてここに居る――。
奏多達は作戦の全貌を『境界線機関』の者達に託して、聖花達がいる建物へと足を運ぶ。
「よし、ここだ」
司の案内で訪れた場所は遠巻きに見れば悪くない建物だったが、実際は急造程度で造られた建物だ。
それゆえに足場が悪い。
「ここから先は一族の上層部の一人、冬城聖花の本拠地。戦いの場はいくらか整えたいところだな……」
司は警戒を示すように言葉を切った。
周りの景色が妙に寒々しいものに思える。まるで張り詰めた緊張感に身震いするようだ。
「つーか、既に俺達がここに来たことに気づいているみたいだぜ」
「俺達の存在に気づいているのか……?」
確かめるようにつぶやいてから、奏多の眸が驚きの色に変わる。
違和感を感じた、といえば簡単なことだが、慧の表情には確信めいたものがあった。
それが事実であると――。
辺鄙な場所に造られた建物故に、監視カメラが破壊されずに残っていたみたいだな。
慧達を観察するのはおぞましいほどの作為。
この感覚は今まで散々味わっている。一族の上層部による監視だ。
まるで一族の冠位の者は、一族の上層部に逆らうことができないことを強調するように、慧達のこれからの行動を白日の下に晒そうとしている。
「随分と悪辣だな。まぁ、一族の上層部らしいやり方だけどな」
「そうね」
慧の言い草に、観月はふっと微笑む。
如何に取るに足らない存在でも警戒を怠らない。
それが一族の上層部の一人である聖花の矜持なのだろう。
ずっと、何もできなかった。
それでも奏多と結愛に打ち明けたことで、ようやく霧がかかっていた未来の道標がはっきりと輪郭を伴って見えてきた――。
『お姉ちゃん、大丈夫ですよ』
思い出すのは導くような結愛の穏やかな声音。
『私達が『破滅の創世』様の記憶のカードを手に入れたら、一族の上層部さんはきっと神の加護を容易に行使できなくなります。それに『破滅の創世』様の記憶を取り戻した奏多くんとも分かち合えます』
……そう、頼るのは寄りかかることではなく、こんな風にみんなと『分かち合う』こと。
『たとえが結愛らしいな』
『えへへ……奏多くんが奏でる演奏、最高です』
あの時、奏多の穏やかな声音に、結愛が勇気づけられたように。
時に頼って、時に頼られて。
互いに背負ったものを預け合い、共に生きていくことなのだ。
結愛、奏多様、慧、司。
不安なことがあったら、これからも頼らせて、ね。
観月は改めて、自らの偽りのない本音を自覚した。
「――たとえ、まどかが行く手を遮ってきても、私達は必ず『破滅の創世』様の記憶のカードを手に入れてみせる……」
拳を握り締めた観月は手加減はしないと意を決する。
かつての傷跡は気付けば、随分と保全されたものだ。
夜空を見上げれば、あの日のまどかと対立した光景が浮かぶようで。
隣に立っている奏多と結愛も、背後に立つ慧と司も。
今日を生きる者達は過去を越えてここに居る――。
奏多達は作戦の全貌を『境界線機関』の者達に託して、聖花達がいる建物へと足を運ぶ。
「よし、ここだ」
司の案内で訪れた場所は遠巻きに見れば悪くない建物だったが、実際は急造程度で造られた建物だ。
それゆえに足場が悪い。
「ここから先は一族の上層部の一人、冬城聖花の本拠地。戦いの場はいくらか整えたいところだな……」
司は警戒を示すように言葉を切った。
周りの景色が妙に寒々しいものに思える。まるで張り詰めた緊張感に身震いするようだ。
「つーか、既に俺達がここに来たことに気づいているみたいだぜ」
「俺達の存在に気づいているのか……?」
確かめるようにつぶやいてから、奏多の眸が驚きの色に変わる。
違和感を感じた、といえば簡単なことだが、慧の表情には確信めいたものがあった。
それが事実であると――。
辺鄙な場所に造られた建物故に、監視カメラが破壊されずに残っていたみたいだな。
慧達を観察するのはおぞましいほどの作為。
この感覚は今まで散々味わっている。一族の上層部による監視だ。
まるで一族の冠位の者は、一族の上層部に逆らうことができないことを強調するように、慧達のこれからの行動を白日の下に晒そうとしている。
「随分と悪辣だな。まぁ、一族の上層部らしいやり方だけどな」
「そうね」
慧の言い草に、観月はふっと微笑む。
如何に取るに足らない存在でも警戒を怠らない。
それが一族の上層部の一人である聖花の矜持なのだろう。