「『破滅の創世』様、待っていてね。あたし達、『破滅の創世』様のために必ずカードを手に入れるよ」
アルリットは『破滅の創世』の言葉の完遂のためにただ、狂おしく誓う。
同時にそれは彼女達、『破滅の創世』の配下達が不退転の反撃を示す最大の難所であることを意味している。
「……他の神様も『破滅の創世』様の帰りを待っているよ」
神の御威光の下。
奏多には決して届かなかった声だけが、アルリットの胸の中で反響していた。
「万死の中に生を拾ったのか」
激しい戦いだった。
どの瞬間に命を落としてもおかしくはなかった。
生き残らなくてはならないという使命感で突き動かされた足は、しかし、根源的な死の恐怖を思い返し、生き延びた者達から力を奪い去る。
立てない、今はきっと暫くは……。
「『破滅の創世』様の記憶のカードはこの近くにあるはずだ。まぁ、今はここから離れようぜ」
「そうだな」
慧と司はアルリット達が去った夜空を仰ぐ。
生き延びさえすれば、再び打ち合う機会は巡ってくる。
今は無理をせずに安全を優先しようと告げるものであった。
「……何だろ」
奏多は油断すれば湧き上がる想いを前にして俯く。
何故か、その想いを自覚したくはなかった。
その感情を認めたくはなかった。
言葉にしてしまえば、きっともうどうしようもなくなる。
喉の奥に膨れ上がる想いを決して言葉にするまいと無理矢理に呑み込もうとしたが――
「……辛い」
できなかった。
吐き出してしまった言葉に、奏多は途方に暮れる。
どうしてだろ……。
響く。奏多の頭の中でずっと響いている。辛いと。
アルリット達が去ってからも。
『破滅の創世』であるはずなのに、『破滅の創世』の配下達と分かり合えない。
奏多とアルリット達を隔てる、たった一つの最も重要で決定的な要素。
それは――その要素はきっと……。
「奏多くん……?」
「あ……」
戸惑いを滲ませた結愛の声が、忘我の域に達しかけた奏多を現実に引き戻す。
「……いや、何でもない」
奏多はその思考を振り払うように頭を振る。
「結愛、俺達もみんなのお手伝いをしよう!」
「はい、奏多くん」
戦いが帰結した今、奏多と結愛はこれから行うことを確かめ合う。
『破滅の創世』の配下達との戦いは決着を見せる。
それでもまだ、大地は荒れていて、激しい戦いの残り香を漂わせていた。
しかし、観月の表情はいまだ晴れない。
「『破滅の創世』の配下達は去ったけど……油断はできないわね」
観月の胸中に言い知れない不安が蘇ったからだ。
「一族の上層部が私達に何も仕掛けてこないとは限らないわ」
観月は周囲への警戒を強める。
監視カメラがない今は一族の上層部の裏をかくことができる状況。
とはいえ、流石にその時間も有限であり、いずれは彼らの監視によって目的の遂行は阻まれてしまうだろう。
それに観月は一族の上層部に逆らうことができない理由がある。
「まぁ、俺と観月をこの任務に当たらせたのも、俺達が一族の上層部に逆らえねぇことを踏まえてのことだろうしな」
「『破滅の創世』様の記憶のカードを確保するための一番の障害は私達かもしれないわね」
それはただ事実を述べただけ。だからこそ、余計に慧と観月は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
神の力を行使できる今の奏多が完全に『破滅の創世』の記憶を取り戻そうとする可能性よりも、実際は一族の上層部が彼らを脅すためにそれを盾にしてくる可能性の方が高かった。
アルリットは『破滅の創世』の言葉の完遂のためにただ、狂おしく誓う。
同時にそれは彼女達、『破滅の創世』の配下達が不退転の反撃を示す最大の難所であることを意味している。
「……他の神様も『破滅の創世』様の帰りを待っているよ」
神の御威光の下。
奏多には決して届かなかった声だけが、アルリットの胸の中で反響していた。
「万死の中に生を拾ったのか」
激しい戦いだった。
どの瞬間に命を落としてもおかしくはなかった。
生き残らなくてはならないという使命感で突き動かされた足は、しかし、根源的な死の恐怖を思い返し、生き延びた者達から力を奪い去る。
立てない、今はきっと暫くは……。
「『破滅の創世』様の記憶のカードはこの近くにあるはずだ。まぁ、今はここから離れようぜ」
「そうだな」
慧と司はアルリット達が去った夜空を仰ぐ。
生き延びさえすれば、再び打ち合う機会は巡ってくる。
今は無理をせずに安全を優先しようと告げるものであった。
「……何だろ」
奏多は油断すれば湧き上がる想いを前にして俯く。
何故か、その想いを自覚したくはなかった。
その感情を認めたくはなかった。
言葉にしてしまえば、きっともうどうしようもなくなる。
喉の奥に膨れ上がる想いを決して言葉にするまいと無理矢理に呑み込もうとしたが――
「……辛い」
できなかった。
吐き出してしまった言葉に、奏多は途方に暮れる。
どうしてだろ……。
響く。奏多の頭の中でずっと響いている。辛いと。
アルリット達が去ってからも。
『破滅の創世』であるはずなのに、『破滅の創世』の配下達と分かり合えない。
奏多とアルリット達を隔てる、たった一つの最も重要で決定的な要素。
それは――その要素はきっと……。
「奏多くん……?」
「あ……」
戸惑いを滲ませた結愛の声が、忘我の域に達しかけた奏多を現実に引き戻す。
「……いや、何でもない」
奏多はその思考を振り払うように頭を振る。
「結愛、俺達もみんなのお手伝いをしよう!」
「はい、奏多くん」
戦いが帰結した今、奏多と結愛はこれから行うことを確かめ合う。
『破滅の創世』の配下達との戦いは決着を見せる。
それでもまだ、大地は荒れていて、激しい戦いの残り香を漂わせていた。
しかし、観月の表情はいまだ晴れない。
「『破滅の創世』の配下達は去ったけど……油断はできないわね」
観月の胸中に言い知れない不安が蘇ったからだ。
「一族の上層部が私達に何も仕掛けてこないとは限らないわ」
観月は周囲への警戒を強める。
監視カメラがない今は一族の上層部の裏をかくことができる状況。
とはいえ、流石にその時間も有限であり、いずれは彼らの監視によって目的の遂行は阻まれてしまうだろう。
それに観月は一族の上層部に逆らうことができない理由がある。
「まぁ、俺と観月をこの任務に当たらせたのも、俺達が一族の上層部に逆らえねぇことを踏まえてのことだろうしな」
「『破滅の創世』様の記憶のカードを確保するための一番の障害は私達かもしれないわね」
それはただ事実を述べただけ。だからこそ、余計に慧と観月は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
神の力を行使できる今の奏多が完全に『破滅の創世』の記憶を取り戻そうとする可能性よりも、実際は一族の上層部が彼らを脅すためにそれを盾にしてくる可能性の方が高かった。