『破滅の創世』の配下達は一族の上層部と深く敵対している。
彼らの持つ因縁は一言では語り尽くせないほどに深く、そして淀みを帯びていた。
しかし、『破滅の創世』の配下達と一族の上層部との因縁が、この不利な状況を食い止める機に恵まれたとも言える。
そう――全てはこの時のための布石ね。
観月は口には出さずにつぶやく。
この世は理不尽で塗り固められている。
だからこそ、自分達も、彼らも、想いは一つだと理解していたから。
「世界の未来を担う組織『境界線機関』さ」
慧は満を持ってその名を口にした。
表向き、一族の者達とは協力関係になっている組織。第三勢力の存在を。
その時、奏多は異変に気づいた。
「慧にーさん、攻撃が来る!」
奏多がそう呼びかけた途端、夜霧の向こうから無数の雷撃が飛んでくる。
ヒュムノスが招いたのは無慈悲に蹂躙する雷光。
絶大な力に飲み込まれた一帯はまるで砂のように崩壊した。
「今回、わたし達が遂行することは一族の者達が匿っている『破滅の創世』様の『記憶のカード』の確保だ」
リディアが打突したその瞬間、空間が裂けた。
「愚かなものだ。わたし達を差し置いて、カードを奪えると思っているとは」
「ケイ……。今度は確実に消滅させるから」
そう告げるリディアとアルリットは明確なる殺意を慧達に向けていた。
恐るべきは『破滅の創世』の配下の者。この場にいる慧達が相手をするには、あまりにも圧倒的すぎた。
時間を稼ぐことができるかどうか。いや、それまで凌いで撤退に持ち込むことすらできるかどうかだ。
「このままじゃ撤退する前に……」
「全滅しちゃいますよ!」
奏多と結愛が視線を滑らせた先には穏やかならざる空気を纏う戦場。
最低な状況だ、と思っても、さらに底があるのが悲しくも世の常だ。
「慧にーさん……」
「彼らがここに来ると、信じようぜ」
そう告げた慧の表情には先程と同じように確信めいたものがあった。
ここを凌げば、勝機が見えると――。
だからこそ、奏多は逸る思いを押さえながら、その信頼に応えようとする。
「……俺は神の記憶がある時の自分がどんな感じなのか分からない。もしかしたら、カードを手にした瞬間、みんなの敵に回るかもしれない」
今まで様々な出来事があった。
ありふれたものや胸を強く打ったもの。
傷痕のように深く残るものもあれば、それらさえも包み込む真綿のような暖かいものもある。
あるいは……。
それらを今、この瞬間、想いとしてぶつけることができるというのなら――。
「それでも、俺は慧にーさんの言葉を信じる!」
きっと奏多は何度でも言うのだろう。
その不屈の果てに、望む未来の光明があると知っているから。
彼らの持つ因縁は一言では語り尽くせないほどに深く、そして淀みを帯びていた。
しかし、『破滅の創世』の配下達と一族の上層部との因縁が、この不利な状況を食い止める機に恵まれたとも言える。
そう――全てはこの時のための布石ね。
観月は口には出さずにつぶやく。
この世は理不尽で塗り固められている。
だからこそ、自分達も、彼らも、想いは一つだと理解していたから。
「世界の未来を担う組織『境界線機関』さ」
慧は満を持ってその名を口にした。
表向き、一族の者達とは協力関係になっている組織。第三勢力の存在を。
その時、奏多は異変に気づいた。
「慧にーさん、攻撃が来る!」
奏多がそう呼びかけた途端、夜霧の向こうから無数の雷撃が飛んでくる。
ヒュムノスが招いたのは無慈悲に蹂躙する雷光。
絶大な力に飲み込まれた一帯はまるで砂のように崩壊した。
「今回、わたし達が遂行することは一族の者達が匿っている『破滅の創世』様の『記憶のカード』の確保だ」
リディアが打突したその瞬間、空間が裂けた。
「愚かなものだ。わたし達を差し置いて、カードを奪えると思っているとは」
「ケイ……。今度は確実に消滅させるから」
そう告げるリディアとアルリットは明確なる殺意を慧達に向けていた。
恐るべきは『破滅の創世』の配下の者。この場にいる慧達が相手をするには、あまりにも圧倒的すぎた。
時間を稼ぐことができるかどうか。いや、それまで凌いで撤退に持ち込むことすらできるかどうかだ。
「このままじゃ撤退する前に……」
「全滅しちゃいますよ!」
奏多と結愛が視線を滑らせた先には穏やかならざる空気を纏う戦場。
最低な状況だ、と思っても、さらに底があるのが悲しくも世の常だ。
「慧にーさん……」
「彼らがここに来ると、信じようぜ」
そう告げた慧の表情には先程と同じように確信めいたものがあった。
ここを凌げば、勝機が見えると――。
だからこそ、奏多は逸る思いを押さえながら、その信頼に応えようとする。
「……俺は神の記憶がある時の自分がどんな感じなのか分からない。もしかしたら、カードを手にした瞬間、みんなの敵に回るかもしれない」
今まで様々な出来事があった。
ありふれたものや胸を強く打ったもの。
傷痕のように深く残るものもあれば、それらさえも包み込む真綿のような暖かいものもある。
あるいは……。
それらを今、この瞬間、想いとしてぶつけることができるというのなら――。
「それでも、俺は慧にーさんの言葉を信じる!」
きっと奏多は何度でも言うのだろう。
その不屈の果てに、望む未来の光明があると知っているから。