「行くぜ、観月。俺達の目的を果たすためにも……力を貸してくれ!」

慧は強い瞳で前を見据える。
それは深い絶望に塗(まみ)れながらも前に進む決意を湛えた眸だった。
何一つ連中の思いどおりなど、させてやるものかと。

「もちろんよ」

他に言葉は不要とばかりに、観月は優しい表情を浮かべていた。
二人の誓いはたった一つ。
奏多と結愛を護るためにこの状況を打開すること――一族の上層部の野望を挫(くじ)くために絶望の未来になる連鎖を断ち切ることだ。
幸い、監視カメラは全てアルリットが破壊している。
先程のように情報が漏れる心配はなさそうだった。
とはいえ、流石にその時間も有限であり、いずれは彼らの監視によって目的の遂行は阻まれてしまうだろう。
しかし、慧と観月は既に次なる作戦に狙いを定めていた。

「『破滅の創世』の配下達の狙いは『破滅の創世』様の記憶のカードだ。今までの『破滅の創世』の配下達、そして一族の上層部の動向から察して、この近くにあるはずさ」

慧は確認するようにこれまでのいきさつを話す。
監視カメラがない今は一族の上層部の裏をかくことができる状況。
そう――任務を遂行するだけで終わってしまうなんて勿体ないのだ。
奏多と結愛の身を護るために、この現状から一歩踏み出す。

「それを『彼ら』と協力して手に入れる」
「彼ら?」
「俺達の同志だ」

奏多が問えば、慧は夜空を見て答える。
抱く志。思うことが同じであれば、互いに進む先は決まっていた。

『破滅の創世』を巡る勢力のうち、『破滅の創世』の配下達は一族の者共々、この世界を破壊し、『破滅の創世』の神の権能を取り戻そうとしている。
もし彼らが『破滅の創世』の記憶のカードを手に入れたら、奏多の安全を確保した上でこの世界を滅ぼすだろう。
他の神々は『破滅の創世』の配下達と協力関係にあるため論外。

一族の上層部はそもそもこの状況を創り出した大元とも言える要因だ。
無限の力を持つ神の加護を得る方法、数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を手中に収める方法の確立は一族の上層部からすれば『悲願』と言えた。
彼らは数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を維持するためにあらゆる謀略を巡らせてくるだろう。
なおかつ、慧と観月は一族の上層部に逆らうことができない理由がある。
故に狙う勢力は残り一つ――。

「自衛隊の特殊部隊もこの組織に関わっている。他の者が出動を躊躇うような場所に出向き、敵を見つけ出して大胆な戦闘、救助活動を行っている組織さ」

己の目的を達成し、新たな未来を築くために邁進する。
それは組織を創設した彼らが掲げる苛烈な威光であった。

「彼らが目指すのは、一族の上層部が掲げる『現状維持』でも、『破滅の創世』の配下達が掲げる『原初回帰』でもない。『思想の自由』だ」

慧は改めて、その信念を実行に移すべく戦意を高めた。