神奏のフラグメンツ

目の前で血の通った家族を、友達を、仲間を、自分の世界を形作るかけがえのない人達を、理不尽に傷つけられ、犯され、弄ばれる現実がそこかしこに転がっている。
いや、恐らく、この世界だけではない。
『破滅の創世』の恩恵が、失われたことはあまりにも大きい。
数多の世界の各々で、目も当てられてない悲劇に襲われている誰かが、今もこの瞬間にもいるのだ。

「俺が――『破滅の創世』がいなくなったことで、数多の世界が苦しんでいる……。だから、何としても、その恩恵を取り戻そうとしている人達がいる」

神の魂の具現として生を受けたこと。
尋常ならざる力を持つことは同時に尋常ならぬ運命を背負うことになるのだと、奏多は身を持って知ってしまったから。

「でも、彼らは今、どこにいるのだろうか……」

奏多がどれだけ考えても、その答えに繋がる道筋を見つけることができなかった。
その真実は、どこにいるとも知れない、不変の魔女、ベアトリーチェの配下達だけが知っている。
ただ――。

「不変の魔女、ベアトリーチェ……。そして『破滅の創世』の配下達……」

ベアトリーチェ達のことを思い出していると、まるで意識が吸い込まれそうになる。
今の奏多にとって、まるで揺りかごのようにどこよりも近く、どこよりも遠い場所にベアトリーチェ達の存在があった。

「彼女達とはやっぱり、どこかで会ったことがあるような気がする……」

胸から溢れる気持ちをそのままに。
それは奏多が零した確かな想いの吐露であった。

「ふむ……わらわ達と会うことで、『破滅の創世』としての意思が反応しているようじゃのう」

その様子を目の当たりにしたベアトリーチェはぽつりとつぶやいた。
その言葉に後押しされるように、レンは奏多の前に進み出た。

「『破滅の創世』様。どうか、記憶を取り戻してください。一族の者は全て、『破滅の創世』様に目を付けて、私欲のために利用しようとしている愚か者です」

最強の力を持つとされる神『破滅の創世』を人という器に封じ込め、神の力を自らの目的に利用する。
その一族の行為は『破滅の創世』のみではなく、他の神全てに対しての裏切りだ。
『破滅の創世』の配下であるレン達にとって、決して看過できない行為だった。

「そんなこと――」
「……今の『破滅の創世』様は記憶を奪われて、一族の者に加担させられております。だからこそ、こうして私達の言葉に戸惑われているのですね」

レンは奏多に――『破滅の創世』に忠誠を誓うように膝をつく。
それはさながら、騎士の示す臣従の礼のようだった。