神奏のフラグメンツ

「奏多、結愛、ここは任せな!」
「慧にーさん……!」

慧は奏多達がこの場から離脱する猶予を作るようにレンに向けて発砲した。
弾は寸分違わず、レン達に命中するが、すぐに塵のように消えていく。

「結愛、今のうちにこの場から離れよう!」
「はい、奏多くん!」

幾度も生じる猛撃。
奏多は結愛とともに、この場から離脱するために力を振り絞っていた。
とはいえ、ベアトリーチェ達の狙いは、どこまでいっても『破滅の創世』である奏多。
敢えて、火中の栗である慧達を拾いにはいかない狡猾さを具備していた。

「また、慧にーさん達の攻撃を無効化したのか……?」
「ほええ、最悪です。皆さんの総攻撃が効いていないですよ!」

奏多と結愛がじわじわと押し込まれていく中、ベアトリーチェ達の攻撃は徐々に苛烈さを増していく。
ベアトリーチェ達がその気になれば、奏多を連れてこの場から立ち去ることも可能だろう。

「厄介極まりねえな」

流石にそう簡単には通してくれないかと、慧は思考を巡らせた。

静寂が満ちた。

一族の上層部にとって、最大の誤算は別世界の女神と別世界の者達の介入だった。
彼らさえいなければと思うことは幾度も起こり、そして今もまた起ころうとしている。
一族の上層部の者達の動向。
それらを利用されても、戦うことを、挑むことをやめないのは、それが一族の上層部の矜恃に連なるものゆえだろう。

「暴動に関わっているのは……女神の配下の者達か。なるほどな。一族の上層部の上部が、総出で暴動の鎮圧に当たっているわけだ」
「そうね……。かなり厄介そうね」

慧の言葉に、透明感のある赤に近い長い髪をなびかせた観月は表情を強張らせる。
神の配下の力は強大だ。
その上、不老不死である。
何かあれば、勝敗の天秤は神の配下達に傾くだろう。

「……暴動」

自分と同じ神である、不変の魔女、ベアトリーチェがこの世界に来た。
それなのに、一族の上層部の上部が、今回の件をヒューゴ達に任せても、動かなけれはいけなかった事態。

「やっぱり、別世界の者達が起こした暴動に関わっているのは……不変の魔女、ベアトリーチェの配下の者達……としか考えられないよな」

奏多は改めて、その答えに行き着いた。
数多に存在する多世界――そこに住む者達の中には一族の者達のことを恨んでいる者も多かった。
特に、この世界の者達は半分以上がよく思っていない。
そもそも一族の者達が強い力を欲するあまり、三人の神のうち、最強の力を持つとされる神『破滅の創世』の力を手に入れようとしたことが全ての発端だったからだ。