神奏のフラグメンツ

「『破滅の創世』の配下の者は、いつでも『破滅の創世』に忠実じゃな。わらわの配下の者にも見習わせたいのう」

ベアトリーチェが念押しするように言った。

「わらわの配下の者は、わらわの意見など、聞く耳持たぬ。だから、人間と手を組んで暴動など、意味のないことを起こすのじゃな」

ベアトリーチェは腕を組んで不満をもらす。

「世界を変えるのは、人間やわらわの配下の者の一存だけでは決められぬというのに」

破滅をもたらす。
救いをもたらす。
相反するようで、彼女達の中では一致している。
神が示した神命。
それは絶対に成し遂げなくてはならない。
神命の定めを受けて生を受けた配下達にとって、神の存在は絶対者だった。

「レン。お主も、そう思うじゃろう?」
「はい、もちろんです。ですが――」

ベアトリーチェの言葉に、随分と物腰丁寧な仕草でレンは礼をする。

「この世界は、最も『破滅の創世』様を冒涜しておりました。故に、彼らの意思どおり、滅ぼさなくてはならないのです。神のご意志を完遂するために」

その存在を根絶やしにすることは、『破滅の創世』を救える唯一の方法であるというように――。
そう告げるレンは、明確なる殺意をこの世界の者達に向けていた。

「しかしながら、『破滅の創世』様を惑わす者がいます。此ノ里結愛さん。一族の者でありながら、『破滅の創世』様を惑わす危険な存在です」
「ふむ……あの小娘じゃな」

レンの危惧に、ベアトリーチェは納得したようにうなずいた。

「ベアトリーチェ様の神の力は、必ずや『破滅の創世』様をお救いするための一助となるはずです」

一見すれば非常に温和なようにも感じるが、レンの胸中には一族の者への形容しがたい怒りがある。
殺意の一言で説明できないほど、その感情は深く深く渦巻いていたから。

「さて、此ノ里結愛を滅ぼす手助けをしようかの」

うっとりと笑ったベアトリーチェの頬に朱の色が昇った。
『不変』を意味するその名を有したベアトリーチェは女神である。
状況を手繰りながらも、前線に飛び出すのはあくまでも興味本位と信じるが故だ。

「皆さん、これ以上は行かせませんよ! 私達にとって奏多くんは大切な存在です!」
「……結愛!」

ベアトリーチェの配下の者達と暴動を起こした別の世界の者達が手を組んでいる。
何とか状況を飲み込んだ結愛は勇気を振り絞り、奏多の前に立った。

「『破滅の創世』様……!」
「おっと、それ以上は行かせねえぜ!」

そう吐露したレンの前に、慧も立ち塞がる。