神奏のフラグメンツ

「それしか、騒動を鎮圧する方法はないのか……」

一族の上層部が選んだものが、最高の解と結論づけるには少なくとももう一つ、別の答えが必要になるだろう。
その存在すらも、無駄で無価値で必要ないものと断じてしまうことは可能性の全てを放棄していることになる。
ただ、今はそれ以外、騒動を鎮圧する方法はないように思えた。

「そうはさせません」

だが、それを『彼ら』は許さなかった。

「ちっ、今度は『破滅の創世』の配下達か……」
「ここまでご足労痛み入ります、『破滅の創世』様。そして、忌まわしき一族の者の方々」

慧の言葉に、随分と物腰丁寧な仕草でレンは礼をする。
大仰に両の腕を広げながら。

「ここはご覧のとおりの状況で、お出しできるものも乏しいです。『破滅の創世』様の記憶が戻られる特別な日に、礼儀として、おもてなしできないことが惜しいですね」
「わらわとしてもいい加減、『破滅の創世』に記憶を取り戻してもらわないと困るのう。今、世界すべてが混乱して、わらわ達だけでは手が足りぬ」

非常に温和なレンの声音に呼応するように、ベアトリーチェは喜ばしいとばかりに笑んでいる。
奏多の――『破滅の創世』の記憶が戻るのを待ちわびるように。

「どうして、ここにいることが分かったの?」

観月の素朴な疑問に、ベアトリーチェはレンに視線を移す。

「アルリットとリディアによって、『破滅の創世』様の居場所は把握できています。それに『破滅の創世』様の力を借りようとする、一族の上層部の者達の動きが活発化しておりましたので」

奏多の姿を認めてから、レンはにこりと微笑んだ。

「ちっ、この状況も、『破滅の創世』の配下の奴らの思惑どおりっていうわけか」
「そんな……。これも暴動の影響によるものなの……」

慧と観月の反応も想定どおりだったというように、ベアトリーチェ達の表情は変わらない。

「暴動……。失われた『破滅の創世』様の恩恵を取り戻そうとする、別の世界の者達の動きも既に把握済みです。ただ――」
「反旗を翻した、わらわの配下の者達が関わっているからのう」

ベアトリーチェはレンの台詞を見越していたように微笑む。
空白。
あまりにも唐突な……ベアトリーチェの宣言に、奏多と結愛の思考が真っ白に染まってしまった。
数秒経って、ようやくひねり出せた言葉は微妙に震えていた。

「そ、それって……暴動に関わっているのは……不変の魔女、ベアトリーチェの配下の者達……」
「はううっ……」

まさかの展開に、奏多と結愛の心が揺さぶる。
混乱は治まることはなく、むしろ深まっていた。