「もちろん、私も、一族の上層部の者達、そして『破滅の創世』の配下達の対処に回るわ」

そう言った観月の言葉には決意が込められている。

「決められた運命なんかに絶対に負けたくないもの!」

観月の覚悟が決まる。
ここにいるみんなで、神の加護に本気で抗う。
そして、『破滅の創世』の神意に立ち向かう。
観月は信じている。
たとえ絶望的な状況でも奇跡が起こることを。
奏多達が定められた運命を壊してくれることを。

「分かった。俺は防衛戦に回る。後で落ち合おう」

司は慌ただしく動き回る『境界線機関』の者達を見つめる。
その事情は様々だろうが――とにかく誰も彼も『破滅の創世』の配下達へ戦いを挑む心算なのは間違いなかった。

「たとえ、敵の実力に圧倒されてもな。俺はこの戦いを諦める気はないぜ」

それは司が示した確かな信念だった。
悪意に晒されながらも、それでも乗り越えて進むしかない……と言うように。
司は踵を返すと、迷わず基地入口へと向かっていった。





神獣の軍勢が歩を進める。
『境界線機関』の者達や自衛隊の大部隊が対応しているが現在、直面している『破滅の創世』の配下達の襲撃には苦しい戦況が続いていた。
それでも彼らは『境界線機関』の基地を堅守するために必死の抵抗を繰り広げていた。

『境界線機関』の新たな拠点の一つ。

軍事基地に隣接しており、防衛面に長けているこの場所は、この世界にとってある種の生命線だったから――。

「基地を守り抜く! ここで何としても食い止めるぞ!」

司が神獣の軍勢を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示された。
ともに立つ味方には奇跡を、立ちふさがる敵には破滅をもたらす、重力操作能力の本領発揮だった。
そこに神獣の軍勢が迫る。
だが、司を穿つことはできなかった。

「分かっていないな。おまえ達はどう足掻いてもこの先を進むことはできない」

司は感情を交えず、ただ事実だけを口にする。
神獣の軍勢の怒濤の如く迫る衝撃に対抗するように、自衛隊の戦車部隊が大地を抉り、けれど果敢に砲弾を叩きつけたからだ。

「絶対に、基地には近づけさせるな!」

敵陣を穿つ猛攻。
戦車部隊は次々と神獣を撃破していく。
死と隣り合わせの戦場から得られる経験は、訓練とは違った恐怖を伴うものであるが故なのだろう。
生き残らねばという執着が彼らを支配していた。
それは消極的なものではなく。むしろ闘争心に火をつけるものであった。
さらに、上空から次々と高い加速性能を持った高速戦闘機が飛来する。