浅湖家や此ノ里家を始め一族の冠位の者の役割は、敵である神々と『破滅の創世』の配下の部隊に対して警戒を行うことであった。
慧達もまた、形だけでも整えた急造部隊として、隙を巧妙にうかがう『破滅の創世』の配下への牽制を行う任務を帯びている。
それは言い換えれば、一族の冠位の者は一族の上層部に逆らうことができないことを意味していた。
そして――
「騒動の鎮圧に、奏多様を求める……。一族の上層部も、手に負えないのか。もしかしたら、今回の騒動、別の世界の者達が関与しているかもしれないな」
数多に存在する多世界――そこに住む者達の中には、一族の者達のことを恨んでいる者も多かった。
中には、この世界そのものを恨んでいる者もいるかもしれない。
『破滅の創世』の恩恵を失う原因。
それを導いた一族の者達、そして、この世界の者達こそが諸悪の根源である。
そう――信じて疑わない者もいるだろう。
この一件、想像以上に根が深そうだ。
このままではまずいな……。
『境界線機関』のリーダーとして、超一線級の戦いを繰り広げてきた司だからこそ感じる座りの悪さ。
何より機先を制した一族の上層部の動きが警鐘を鳴らした。
「父さん、母さん!」
その頃、奏多は両親との再会を果たしていた。
「奏多!」
「無事で良かった……」
開口一番、そう言うと、奏多の両親は調度を蹴散らすように奏多のそばに走り寄ると、その体を思いきり抱きしめる。
あまりにも突然の出来事だったため、奏多はすぐには反応することができず、されるがままに抱き寄せられていた。
「お父さん、お母さん」
「ただいまです!」
観月と結愛もその近くで、両親との再会を喜んでいる。
ただ、慧だけは懐かしむように、奏多達の様子を見つめていた。
「家族との再会か……」
不安なのか、期待なのか、懺悔なのか、願いなのか、分からない。
両親と穏やかに談笑する奏多達。
彼らを見つめている慧の胸は複雑な感情で壊れそうなくらいに高鳴っている。
「もし、あのまま蒼真が生きていたら……俺達、家族は……今も幸せだったんだろうな」
そんな願いを慧が抱いたのは当たり前のことだった。
慧は家庭が崩壊した過去の出来事を掘り起こす。
『蒼真……頼むから起きてくれよ……』
弟が亡くなったあの日、幼い慧の心に強烈に焼きついた蒼真の姿。
それまで当たり前のように続けてきた会うことも、触れることも、話すことも、笑い合うことも。
その全てが奪われて、残酷な世界にその家族だけが放り出されたと思っていた。
死というものはそれほどまでに冷たい断絶になるのだと、慧はあの日、絶望的に思い知らされたのだ。
慧達もまた、形だけでも整えた急造部隊として、隙を巧妙にうかがう『破滅の創世』の配下への牽制を行う任務を帯びている。
それは言い換えれば、一族の冠位の者は一族の上層部に逆らうことができないことを意味していた。
そして――
「騒動の鎮圧に、奏多様を求める……。一族の上層部も、手に負えないのか。もしかしたら、今回の騒動、別の世界の者達が関与しているかもしれないな」
数多に存在する多世界――そこに住む者達の中には、一族の者達のことを恨んでいる者も多かった。
中には、この世界そのものを恨んでいる者もいるかもしれない。
『破滅の創世』の恩恵を失う原因。
それを導いた一族の者達、そして、この世界の者達こそが諸悪の根源である。
そう――信じて疑わない者もいるだろう。
この一件、想像以上に根が深そうだ。
このままではまずいな……。
『境界線機関』のリーダーとして、超一線級の戦いを繰り広げてきた司だからこそ感じる座りの悪さ。
何より機先を制した一族の上層部の動きが警鐘を鳴らした。
「父さん、母さん!」
その頃、奏多は両親との再会を果たしていた。
「奏多!」
「無事で良かった……」
開口一番、そう言うと、奏多の両親は調度を蹴散らすように奏多のそばに走り寄ると、その体を思いきり抱きしめる。
あまりにも突然の出来事だったため、奏多はすぐには反応することができず、されるがままに抱き寄せられていた。
「お父さん、お母さん」
「ただいまです!」
観月と結愛もその近くで、両親との再会を喜んでいる。
ただ、慧だけは懐かしむように、奏多達の様子を見つめていた。
「家族との再会か……」
不安なのか、期待なのか、懺悔なのか、願いなのか、分からない。
両親と穏やかに談笑する奏多達。
彼らを見つめている慧の胸は複雑な感情で壊れそうなくらいに高鳴っている。
「もし、あのまま蒼真が生きていたら……俺達、家族は……今も幸せだったんだろうな」
そんな願いを慧が抱いたのは当たり前のことだった。
慧は家庭が崩壊した過去の出来事を掘り起こす。
『蒼真……頼むから起きてくれよ……』
弟が亡くなったあの日、幼い慧の心に強烈に焼きついた蒼真の姿。
それまで当たり前のように続けてきた会うことも、触れることも、話すことも、笑い合うことも。
その全てが奪われて、残酷な世界にその家族だけが放り出されたと思っていた。
死というものはそれほどまでに冷たい断絶になるのだと、慧はあの日、絶望的に思い知らされたのだ。



