「えへへ……」
結愛の目線が隣の奏多へと注がれる。
「奏多くん。お父さんとお母さん、この基地にいるみたいです。さっそく、お父さんとお母さんを探しましょう。お父さんとお母さんはきっと、奏多くんのお父さんとお母さんと一緒に基地に避難しているはずです」
「そうだな」
様々な思いが過りつつも、奏多と結愛は動き出す。
「奏多様のご両親は今、どこに?」
「はい。現在は、宿舎で荷物の整理をしておられます」
司が基地で安否情報を確認したことで、奏多と結愛の両親はすぐにこちらに出向いてくれることになった。
「奏多くん、早く早く。お父さんとお母さん、待ちくたびれているかもです」
「急ぐと危ないだろ」
今は養生の時だ。
それを終えた時、彼らの戦いはまた始まるのだろう。
激戦を乗り越えてきたせいか、奏多と結愛にとって、両親との再会は久しぶりの安らぎのひとときだった。
「状況は――?」
司に問い掛けられてから、『境界線機関』に所属する男性は敬礼し、「以前、変わりなく」と返した。
『境界線機関』の一員として、そして一族の冠位の者として。
男性は外套で煽られ、被さった埃を払い除けてから顔を上げる。
『境界線機関』の基地。
この場所は、この世界にとって、ある種の生命線である。
「『境界線機関』の基地本部が破壊された後、この地を新たな拠点の一つとしています。この地は、軍事基地に隣接しており、防衛面に長けています」
「……そうか」
これまでの戦局を見据えた男性の報告に、司は渋い表情を見せた。
『境界線機関』の者達は無数の問題を解決し、幾多の困難と『破滅の創世』の配下という災厄を退けて世界を救い続けている。
世界の未来を担う組織『境界線機関』。
表向き、一族の者達とは協力関係になっている組織。
猛者ぞろいである彼らの存在は、この世界の人々の光明になっていた。
だが、一族の上層部もそれをよく理解しているのだろう。
一族の上層部は『境界線機関』の存在の重要性を理解しているからこそ、奏多の警護を司達に任せている節がある。
しかし――
「司様。一族の上層部の方々が、別の騒動の鎮圧について、至急、奏多様との面会を求めております」
「俺達がここにいることをもう知ったのか。一族の上層部に、情報が行き渡るのが早いな。緊急脱出装置を設置したのは、一族の上層部の者達。初めから、この場所に出ることを把握していたんだろうな」
それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計に司は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
結愛の目線が隣の奏多へと注がれる。
「奏多くん。お父さんとお母さん、この基地にいるみたいです。さっそく、お父さんとお母さんを探しましょう。お父さんとお母さんはきっと、奏多くんのお父さんとお母さんと一緒に基地に避難しているはずです」
「そうだな」
様々な思いが過りつつも、奏多と結愛は動き出す。
「奏多様のご両親は今、どこに?」
「はい。現在は、宿舎で荷物の整理をしておられます」
司が基地で安否情報を確認したことで、奏多と結愛の両親はすぐにこちらに出向いてくれることになった。
「奏多くん、早く早く。お父さんとお母さん、待ちくたびれているかもです」
「急ぐと危ないだろ」
今は養生の時だ。
それを終えた時、彼らの戦いはまた始まるのだろう。
激戦を乗り越えてきたせいか、奏多と結愛にとって、両親との再会は久しぶりの安らぎのひとときだった。
「状況は――?」
司に問い掛けられてから、『境界線機関』に所属する男性は敬礼し、「以前、変わりなく」と返した。
『境界線機関』の一員として、そして一族の冠位の者として。
男性は外套で煽られ、被さった埃を払い除けてから顔を上げる。
『境界線機関』の基地。
この場所は、この世界にとって、ある種の生命線である。
「『境界線機関』の基地本部が破壊された後、この地を新たな拠点の一つとしています。この地は、軍事基地に隣接しており、防衛面に長けています」
「……そうか」
これまでの戦局を見据えた男性の報告に、司は渋い表情を見せた。
『境界線機関』の者達は無数の問題を解決し、幾多の困難と『破滅の創世』の配下という災厄を退けて世界を救い続けている。
世界の未来を担う組織『境界線機関』。
表向き、一族の者達とは協力関係になっている組織。
猛者ぞろいである彼らの存在は、この世界の人々の光明になっていた。
だが、一族の上層部もそれをよく理解しているのだろう。
一族の上層部は『境界線機関』の存在の重要性を理解しているからこそ、奏多の警護を司達に任せている節がある。
しかし――
「司様。一族の上層部の方々が、別の騒動の鎮圧について、至急、奏多様との面会を求めております」
「俺達がここにいることをもう知ったのか。一族の上層部に、情報が行き渡るのが早いな。緊急脱出装置を設置したのは、一族の上層部の者達。初めから、この場所に出ることを把握していたんだろうな」
それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計に司は自身の置かれた状況に打ちのめされる。



