「緊急脱出装置、発動!」
司の声に呼応するように、地面に光が浮かび上がった。
指先に力が集まり、やがて円形の魔法陣が形成される。
それはゆっくりと回転し、解けていく。
最優先事項は奏多の身の安全――。
『境界線機関』の者達は今回も、奏多を守護する任務を帯びている。
その守りは固く、そう簡単には隙は見せない。
しかも、今は緊急脱出装置の魔法陣の上にいる。
だからこそ――。
「奏多様、お待ちください。我々も……!」
他の一族の上層部の者達が駆け寄ってくる前に、颯爽とその場から姿を消すことができた。
「何とか……振り切ったか……。だが、この状況になっても、一族の上層部の上部が姿を見せない理由。別の騒動の鎮圧、気がかりだな……」
それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計に司は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
一族の上層部の上部の一人、ヒューゴ達と協力して、不変の魔女、ベアトリーチェと『破滅の創世』の配下達と戦いを繰り広げた。
どの瞬間に命を落としてもおかしくはなかった。
痛手を受けたのは『境界線機関』だけではない。
一族の上層部も痛手を負っただろう。
「ふー、ようやく安全そうな場所にたどり着きました」
『境界線機関』の基地の入口の前で、結愛は喜色満面に大きく伸びをする。
どうやら避難所としても設けられているようで、多くの人達が荷物を運ぶために行き来しているのが見受けられた。
「父さんと母さん、無事だよな」
「心配です……」
奏多と結愛の気がかりは両親の安否だ。
『境界線機関』の基地本部の防衛戦以降、行方が分かっていない。
スマートフォンで連絡を取りたくても、一向に繋がらない状態だったのだ。
「あっ……奏多くん、メール、送れましたよ。やっと、スマートフォンが使える環境になりました」
それが新鮮なのか、結愛はくっーと胸が弾ける思いを噛みしめる。
「んもぉー、今まで大変でしたよ……。お父さんとお母さんに電話をかけても通じないし、メールを送ろうとしても送信できなかったのは困りものです」
「それだけ、大変な事態だったんだろ」
結愛は一度だけ目を伏せ、そしてまた、奏多をまっすぐに見つめた。
「私にとって、奏多くんは奏多くんです。だから、他の神様や『破滅の創世』様の配下さん達、そして一族の上層部さん達には、奏多くんを渡しませんよ」
度重なる苛烈な戦いの後も、確かに今こうして間違いなく奏多は『結愛の幼なじみ』としてこの世界に存在している。
その事実は途方もなく、結愛の心を温めた。
司の声に呼応するように、地面に光が浮かび上がった。
指先に力が集まり、やがて円形の魔法陣が形成される。
それはゆっくりと回転し、解けていく。
最優先事項は奏多の身の安全――。
『境界線機関』の者達は今回も、奏多を守護する任務を帯びている。
その守りは固く、そう簡単には隙は見せない。
しかも、今は緊急脱出装置の魔法陣の上にいる。
だからこそ――。
「奏多様、お待ちください。我々も……!」
他の一族の上層部の者達が駆け寄ってくる前に、颯爽とその場から姿を消すことができた。
「何とか……振り切ったか……。だが、この状況になっても、一族の上層部の上部が姿を見せない理由。別の騒動の鎮圧、気がかりだな……」
それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計に司は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
一族の上層部の上部の一人、ヒューゴ達と協力して、不変の魔女、ベアトリーチェと『破滅の創世』の配下達と戦いを繰り広げた。
どの瞬間に命を落としてもおかしくはなかった。
痛手を受けたのは『境界線機関』だけではない。
一族の上層部も痛手を負っただろう。
「ふー、ようやく安全そうな場所にたどり着きました」
『境界線機関』の基地の入口の前で、結愛は喜色満面に大きく伸びをする。
どうやら避難所としても設けられているようで、多くの人達が荷物を運ぶために行き来しているのが見受けられた。
「父さんと母さん、無事だよな」
「心配です……」
奏多と結愛の気がかりは両親の安否だ。
『境界線機関』の基地本部の防衛戦以降、行方が分かっていない。
スマートフォンで連絡を取りたくても、一向に繋がらない状態だったのだ。
「あっ……奏多くん、メール、送れましたよ。やっと、スマートフォンが使える環境になりました」
それが新鮮なのか、結愛はくっーと胸が弾ける思いを噛みしめる。
「んもぉー、今まで大変でしたよ……。お父さんとお母さんに電話をかけても通じないし、メールを送ろうとしても送信できなかったのは困りものです」
「それだけ、大変な事態だったんだろ」
結愛は一度だけ目を伏せ、そしてまた、奏多をまっすぐに見つめた。
「私にとって、奏多くんは奏多くんです。だから、他の神様や『破滅の創世』様の配下さん達、そして一族の上層部さん達には、奏多くんを渡しませんよ」
度重なる苛烈な戦いの後も、確かに今こうして間違いなく奏多は『結愛の幼なじみ』としてこの世界に存在している。
その事実は途方もなく、結愛の心を温めた。



