「……結愛、ありがとう」
「奏多くん」
奏多は一度だけ目を伏せ、そしてまた結愛をまっすぐに見つめる。
「俺の――『破滅の創世』としての力で、数多の世界を救う手段を見つけてみせる!」
「奏多くんなら、必ずできますよ」
結愛はぽつりと素直な声色を零す。
ありふれた何気ない日常こそが救いなのだと他の誰でもない奏多と結愛だけが知っている。
二人でいれば、世界はどこまでも光で満ちていた。
「奏多……」
「慧にーさん」
奏多は改めて、慧と向き合う。
これからどうすればいいのか、確固たる解答はまだ出ていない。
だが、慧が次に口する言葉の意味はもう理解できていた。
怖れを越えなければ、得られない何かがあることを知ったから。
この胸に輝く意思が、何よりもそれを証明しているのだから。
「俺は絶対に、緊急脱出装置を見つけてみせる! そして必ず、突破口を開いてみせる!」
奏多は裂帛の気合いを込める。
緊急脱出装置を探し出すために、自身の力を解き放とうとして――。
「くっ……。動けない……」
奏多は油断すれば湧き上がる想いを前にして思わずうつむく。
渦巻く不安はどうしようもなく膨らんでいくばかりだ。
「いや、動けないんじゃない。これは……」
奏多は刹那、気付いた。
身動きが取れない理由。
それは内側から湧き上がる『破滅の創世』としての意思が、奏多の動きを制限しているからだと。
『破滅の創世』であるはずなのに、同じ神である不変の魔女、ベアトリーチェや『破滅の創世』の配下達と分かり合えない。
奏多とベアトリーチェ達を隔てる、たった一つの最も重要で決定的な要素。
その要素は……『失った神としての記憶』だ。
その記憶には、一族の上層部が犯した罪過への『破滅の創世』の憤懣がある。
ましてや、それが延々と折り重ねった憎しみに起因するものであるならば、もはや激昂に近いかもしれない。
『破滅の創世』である奏多であればこそ、その怒りを身に染みるほどに理解している。
何度も神としての憤りに――絶望視した過去に囚われてしまうかもしれない。
それでも……諦めたくない。
結愛と……みんなと共に生きたい。
そして、慧にーさんを救いたい。
奏多は現実で踏ん張ると決めている。
奏多が人として生きた人生という道を、『破滅の創世』は否定なんてできないはずだ。
それに人間として生まれたことを過ちになんてしたくはないから――。
それでも奏多が事実を知ろうとすればするほど、どれが『正しい』かは分からなくなってくる。
誰かにとって悪だったものが、別の誰かには善となる。
人と神。相容れない思いがぶつかり合う。簡単に答えなど出ようはずもなかった。
しかし――。
「奏多くん」
奏多は一度だけ目を伏せ、そしてまた結愛をまっすぐに見つめる。
「俺の――『破滅の創世』としての力で、数多の世界を救う手段を見つけてみせる!」
「奏多くんなら、必ずできますよ」
結愛はぽつりと素直な声色を零す。
ありふれた何気ない日常こそが救いなのだと他の誰でもない奏多と結愛だけが知っている。
二人でいれば、世界はどこまでも光で満ちていた。
「奏多……」
「慧にーさん」
奏多は改めて、慧と向き合う。
これからどうすればいいのか、確固たる解答はまだ出ていない。
だが、慧が次に口する言葉の意味はもう理解できていた。
怖れを越えなければ、得られない何かがあることを知ったから。
この胸に輝く意思が、何よりもそれを証明しているのだから。
「俺は絶対に、緊急脱出装置を見つけてみせる! そして必ず、突破口を開いてみせる!」
奏多は裂帛の気合いを込める。
緊急脱出装置を探し出すために、自身の力を解き放とうとして――。
「くっ……。動けない……」
奏多は油断すれば湧き上がる想いを前にして思わずうつむく。
渦巻く不安はどうしようもなく膨らんでいくばかりだ。
「いや、動けないんじゃない。これは……」
奏多は刹那、気付いた。
身動きが取れない理由。
それは内側から湧き上がる『破滅の創世』としての意思が、奏多の動きを制限しているからだと。
『破滅の創世』であるはずなのに、同じ神である不変の魔女、ベアトリーチェや『破滅の創世』の配下達と分かり合えない。
奏多とベアトリーチェ達を隔てる、たった一つの最も重要で決定的な要素。
その要素は……『失った神としての記憶』だ。
その記憶には、一族の上層部が犯した罪過への『破滅の創世』の憤懣がある。
ましてや、それが延々と折り重ねった憎しみに起因するものであるならば、もはや激昂に近いかもしれない。
『破滅の創世』である奏多であればこそ、その怒りを身に染みるほどに理解している。
何度も神としての憤りに――絶望視した過去に囚われてしまうかもしれない。
それでも……諦めたくない。
結愛と……みんなと共に生きたい。
そして、慧にーさんを救いたい。
奏多は現実で踏ん張ると決めている。
奏多が人として生きた人生という道を、『破滅の創世』は否定なんてできないはずだ。
それに人間として生まれたことを過ちになんてしたくはないから――。
それでも奏多が事実を知ろうとすればするほど、どれが『正しい』かは分からなくなってくる。
誰かにとって悪だったものが、別の誰かには善となる。
人と神。相容れない思いがぶつかり合う。簡単に答えなど出ようはずもなかった。
しかし――。



