そんな一族の上層部が過去から連綿と作り上げてきた組織が今の一族である。
奏多の想い、結愛の切実な願い。
慧の決意、観月の祈り。
そうした個々の思いがどうであるにせよ。
無限の力を持つ神の加護を得る方法、数多の世界そのものを改変させることが可能な全知全能の神――『破滅の創世』を手中に収める方法の確立は一族の上層部からすれば『悲願』と言えた。

「だが、このままでいいとは思わないぜ」

慧は言葉を切った。
自分を蘇えらせて不死者にして利用したのは誰なのか分からない。
一族の上層部の思惑も不明のまま――。
だが――

「行くぜ、観月。俺達が前に突き進むためにも……力を貸してくれ!」

慧は強い瞳で前を見据える。
それは深い絶望に塗(まみ)れながらも前に進む決意を湛えた眸だった。
何一つ連中の思いどおりなど、させてやるものかと。

「当然ね」

他に言葉は不要とばかりに、観月は優しい表情を浮かべていた。
二人の誓いはたった一つ。
奏多と結愛を護るためにこの状況を打開すること――一族の上層部の野望を挫(くじ)くために絶望の未来になる連鎖を断ち切ることだ。
その時、慧は背後に突き刺さるような視線を感じ取る。

「……っ」

観察とも取れる不気味な監視カメラの動き。
それは――慧達が何らかの行動を示せば、全てが丸裸にされるような謀(はかりごと)を感じた。

こいつは……。

おぞましいほどの作為。
この感覚は今まで散々味わっている。一族の上層部による監視だ。
まるで一族の冠位の者は、一族の上層部に逆らうことができないことを強調するように、慧達のこれからの行動を白日の下に晒そうとする。
そんな監視下の中――

「下らないことをするね。一族の者は」

その声色が降り注いできたのは、真に戯れであったが故か。
それとも――何か別の思惑があってのことか。
その意図を慧達が掴むより早く、アルリットは纏う空気を変える。

「全て丸見えだよ!」

勢いよく振りかざしたアルリットの右手から、今までと比較にならない規模の力が放射されて、空に巨大な裂け目を描き出した。
その裂け目から途方もない焔の塊の数々が轟音とともに地上に落下する。
その瞬間――

「ちっ、容赦ないな……!」
「……なっ」

爆風に巻き込まれた慧と観月が目にしたのは、建物一帯を焦土と化して灰燼と帰してしまうほどの圧倒的な強さを持つ敵の存在。
焔の塊は設置されていた監視カメラを中心にして落下し、ことごとく破壊の限りを尽くしていた。
まるで最初から全ての監視カメラの位置を把握していたように猛威を振るっている。
その過程の最中で残されるはずだった監視カメラの記録は、圧倒的な威力と速度の前ではただ無為の証左にしかなりえない。

……脆い。あまりにも。

アルリットの放った軽い打突はいとも容易く、一族の上層部の作為を粉々に砕いた。