「何とか……なったか……」
それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計に司は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
激しい戦いだった。
どの瞬間に命を落としてもおかしくはなかった。
痛手を受けたのは『境界線機関』だけではない。
一族の上層部も痛手を負っただろう。
『破滅の創世』の配下達。
そして、一族の上層部の一人であるヒューゴ達を振り切ってからしばらく経った後、やがて、奏多達の視界には空港の敷地が見えてきた。
「奏多くん。この空港から、別の場所に行けるみたいですよ」
結愛が指差す先を見据えれば、飛行機が飛ぶ姿が見えてくる。
「みんなが無事で良かった……」
「はい、奏多くん」
奏多と結愛は慧達を見て、安堵の胸をなでおろす。
喜びも束の間、慧は確認するように置かれている状況を踏まえる。
「何とか、ここまで逃げ切れたな」
「ああ。だが、ここも安全ではない。緊急脱出装置は、一族の上層部の者達が用意したものだ。空港では、一族の上層部の者達が待ち構えている可能性がある」
司は警戒を示すように言葉を切った。
周りの景色が妙に寒々しいものに思える。
まるで張り詰めた緊張感に身震いするようだ。
この状況は誰かの悪意に彩られて作られているような、そんな予感さえも感じられる。
「それにしても……今回も不死のヒューゴの能力に翻弄されたな。『不死者にする能力』と『攻撃を無効化する能力』。二つの能力を持っている。厄介だな」
司は改めて、一族の上層部の者達の手強さを肌で感じ取っていた。
奏多達は、ここから安全な場所まで向かうことになる。
先の戦いで生き延びた人々の姿を見やりながら、一族の上層部、そして『破滅の創世』の配下達と相対した時の行動について、道すがらの相談を開始した。
「今のところ、『破滅の創世』の配下達とヒューゴ達は追ってきていない。『破滅の創世』の配下達の手の内はまだ探れないのだろうが、これからも、奏多様と此ノ里家の者を狙ってくるのは間違いないな」
司がこれまでの状況から推測を口にする。
「つーか、強奪で能力を奪えるのは厄介だな。ヒューゴの能力を奪われたら、大変なことになりそうだ」
「本当ね」
慧と観月は底の知れない『破滅の創世』の配下達の力に改めて畏怖した。
「まぁ、アルリットは忘却の王ヒュムノスと同じく、『破滅の創世』の幹部の一人だからな」
ひりつく緊張が慧の首元を駆け抜けて行く。
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。
アルリットもまた、『蒼天の王』として、蒼穹の銘を戴く幹部の一人である。
それはただ事実を述べただけ。
だからこそ、余計に司は自身の置かれた状況に打ちのめされる。
激しい戦いだった。
どの瞬間に命を落としてもおかしくはなかった。
痛手を受けたのは『境界線機関』だけではない。
一族の上層部も痛手を負っただろう。
『破滅の創世』の配下達。
そして、一族の上層部の一人であるヒューゴ達を振り切ってからしばらく経った後、やがて、奏多達の視界には空港の敷地が見えてきた。
「奏多くん。この空港から、別の場所に行けるみたいですよ」
結愛が指差す先を見据えれば、飛行機が飛ぶ姿が見えてくる。
「みんなが無事で良かった……」
「はい、奏多くん」
奏多と結愛は慧達を見て、安堵の胸をなでおろす。
喜びも束の間、慧は確認するように置かれている状況を踏まえる。
「何とか、ここまで逃げ切れたな」
「ああ。だが、ここも安全ではない。緊急脱出装置は、一族の上層部の者達が用意したものだ。空港では、一族の上層部の者達が待ち構えている可能性がある」
司は警戒を示すように言葉を切った。
周りの景色が妙に寒々しいものに思える。
まるで張り詰めた緊張感に身震いするようだ。
この状況は誰かの悪意に彩られて作られているような、そんな予感さえも感じられる。
「それにしても……今回も不死のヒューゴの能力に翻弄されたな。『不死者にする能力』と『攻撃を無効化する能力』。二つの能力を持っている。厄介だな」
司は改めて、一族の上層部の者達の手強さを肌で感じ取っていた。
奏多達は、ここから安全な場所まで向かうことになる。
先の戦いで生き延びた人々の姿を見やりながら、一族の上層部、そして『破滅の創世』の配下達と相対した時の行動について、道すがらの相談を開始した。
「今のところ、『破滅の創世』の配下達とヒューゴ達は追ってきていない。『破滅の創世』の配下達の手の内はまだ探れないのだろうが、これからも、奏多様と此ノ里家の者を狙ってくるのは間違いないな」
司がこれまでの状況から推測を口にする。
「つーか、強奪で能力を奪えるのは厄介だな。ヒューゴの能力を奪われたら、大変なことになりそうだ」
「本当ね」
慧と観月は底の知れない『破滅の創世』の配下達の力に改めて畏怖した。
「まぁ、アルリットは忘却の王ヒュムノスと同じく、『破滅の創世』の幹部の一人だからな」
ひりつく緊張が慧の首元を駆け抜けて行く。
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。
アルリットもまた、『蒼天の王』として、蒼穹の銘を戴く幹部の一人である。



