「今だ、突き進むぞ！」

さらに司を先頭に、『境界線機関』の者達が『破滅の創世』の配下達の動きを崩しにかかる。

『境界線機関』はこの世界の未来を担う、練度の高い精強な部隊だった。
表向き、一族の者達とは協力関係になっている組織である。
彼らは世界各地で『破滅の創世』の配下達と戦闘を繰り広げている猛者だった。
その部隊の構成員は、一族の冠位の者から軍に所属している者まで様々な面子で成り立っている。
きっと彼らは数多の障害を乗り越えながら、それでもいずれは安全な場所へと足を踏み入れるだろう。

「『破滅の創世』の配下、そして不変の魔女、ベアトリーチェ様の力は強大だ。最悪、この一帯が崩壊するぜ。緊急脱出装置を使って、この場を切り抜けるためには、俺達を先行させた方がいいんじゃないか。そう思わねぇ？」
「そう思わないから、俺達が先行しているんだ」

司の率直な物言いに、ヒューゴはその唇に「相変わらず、感情的だな」と純粋な言葉を形取らせた。

「雄飛司。いい加減、状況を把握しようぜ。まあ、俺はここで死ぬつもりはないから、できる限りの対策を講じらせてもらう」

現状を把握したヒューゴは唇を噛む。
このまま、悪戯に時間を消費しても平行線だ。
何もしなくては『破滅の創世』の配下達の前に為す術もなく朽ち果てるだけだろう。
ならば、機先を制した方が確かだ。

「なあ、此ノ里結愛。おまえはどう思う？」
「ほええ……！」

ヒューゴの突然の矛先の変更に、結愛はどうしたらいいのか分からず、あわてふためく。

「此ノ里結愛さん。緊急脱出装置の発動には、あなたの協力が必要不可欠です」
「はううっ……」

さらに一族の上層部の者達に囲まれて、結愛はわたわたと明確に言葉を詰まらせた。

「『破滅の創世』の配下、そして不変の魔女、ベアトリーチェ様の力は強大だ。おまえの大好きな幼なじみを守り抜くためには、この場で緊急脱出装置を発動させた方がいいんじゃないか。そう思わねぇ？」
「はううっ、それは……」

ヒューゴの指摘に、結愛はわたわたと明確に言葉を詰まらせた。

「ここを切り抜ければ、俺はおまえ達とは別行動を取ると約束する」
「――白々しいな」

ヒューゴのその問いかけに――応えたのは司だった。

「別行動するとは思わない。むしろ、その逆――」
「そうさ。今の『破滅の創世』様にとって、此ノ里結愛の生死は何よりも重要だろう」　

司の言いたいことを察したように、ヒューゴは薄く笑みを浮かべて言った。