神奏のフラグメンツ

「大丈夫か、結愛」
「はい、奏多くん」

奏多と結愛は会話を交わすことで、感謝の念と次なる連携を察し合う。

「『破滅の創世』様……」

リディアは攻撃を防がれたことよりも、奏多が結愛を救うために割って入ったことに動揺していた。

「どうして……どうして……いつも、その人間を庇うんだ……? その人間は『破滅の創世』様の記憶を封印した一族の者だ。庇う必要はない」
「……っ」

そう吐露したリディアの瞳と奏多の瞳が重なる。
その瞬間、奏多の胸が苦しくて息苦しくなる。
リディアの瞳はあまりにも深く、吸い込まれそうだったからだ。

「『破滅の創世』様……!」
「おっと、それ以上は行かせねえぜ!」

そう吐露したリディアの前に慧は立ち塞がる。

「奏多、ここは任せな!」
「慧にーさん……!」

慧は奏多達がこの場を離脱する猶予を作るようにリディアに向けて発砲した。
弾は寸分違わず、リディアに命中するが、すぐに塵のように消えていった。

「どうして……か」

奏多は油断すれば湧き上がる想いを前にして俯く。
その時、心中で無機質な声が木霊した。

『約束など不要なものだ。愚者を救う必要などない』

人は、永遠ではない。
そんなことは分かり切っていることなのだけど。

それでも。

それでも――

「奏多くん。私達は――」
「ああ、俺達は慧にーさん達を援護しよう!」

それでも奏多は結愛と会話を交わすことで、連携の息を察し合う。

「降り注ぐ、は……」

結愛は先手を取るためにカードを振るう。
ふわりと浮かび上がる氷の柱が、奏多の存在が、彼女に膝を突くことを許さなかった。

「氷の裁き……!!」

氷塊の連射が織り成したところで、結愛は渾身の反攻を叩き込む。
瞬時に氷気が爆発的な力とともに炸裂した。
攻撃は無効化されるが、それでも足止めにはなる。

「どんな困難が立ち塞がっても、私達は前に進んでみせるわ!」
「愚かな。ここから生きて帰れると思っているとは」

観月はありったけの力をカードに注ぎ込みながら、まっすぐにリディアの向こう側を見据えた。
向かう先は安全な場所。
奏多を守り抜くためにも、ここで足止めなどされている暇はないのだから。

「私はもう逃げない。全力で奏多様を護ってみせるわ!」

拳を握り締めた観月は手加減はしないと意を決する。

「結愛、奏多様、加勢するわ!」

ベアトリーチェを含めた『破滅の創世』の配下達を、奏多達だけで相手取るには危険すぎる。
だからこそ、観月はカードを操り、約定を導き出す。

「降り注ぐは星の裁き……!」
「これは、っ……!」

その刹那、『破滅の創世』の配下達へ無数の強大な岩が流星のごとく、地面に降り注ぐ。
その結果、カードから放たれた無数の強大な岩の弾は地面に突き刺さり、目眩ましになる。