神奏のフラグメンツ

「そうさ。今の『破滅の創世』様にとって、此ノ里結愛の生死は何よりも重要だろう」 

奏多の姿を認めてから、ヒューゴは薄く笑みを浮かべて言った。

「……はううっ、重要?」

それはただ事実を述べただけ。
しかし、ヒューゴの言葉は、結愛には額面以上の重みがあった。

「あと、あの……できれば、重要だけではなくて」
「結愛?」

それを願うのは欲張りだと思いながらも、結愛には離れがたい気持ちだけが増していく。

「奏多くんの未来のお嫁さんになりたいです!」
「……っ」

結愛が覚悟を決めて、奏多を切望する。
その独占じみた想いに、奏多の胸が強く脈打った。

「馬鹿な、あり得ない!」

驚きと戸惑いを滲ませた声で、リディアは結愛の決意を切り捨てた。

「一族の者は『破滅の創世』様に目を付けて、今も私欲のために利用しようとしている愚か者だ」

これから何をしようと一族の者の罪が消えるわけではない。
『破滅の創世』の配下であるリディア達が決して許さないことが彼らの罪の証明となる。

「ふざけるな! 人間が……ましてや一族の者が『破滅の創世』様にそのような願いを抱くなど――」
「ふざけていませんよ! 明日、今日の奏多くんに逢えなくても、私は明日も奏多くんに恋をします! 怖いですけど……すごく不安ですけど……もう逃げません!」

リディアが嫌悪を催しても、結愛は真っ向から向き合う。
最後まで自分らしく在るために――結愛は今を精一杯駆け抜ける。
それは結愛なりの矜持だった。

「一族の者が『破滅の創世』様にそのような願いを抱くなど、愚かだ。無為だと知れ!!」

連綿の攻防の最中、リディアが宙に顕現させた数多の光の槍を投擲(とうてき)する。
『破滅の創世』が定めし世界を歪めた一族の者達に天罰を与えて、『破滅の創世』の意志を遂行する。
この世界の淀んだ流れを正すべく天に還すために――。
この強靭な猛撃をまともに浴びれば、結愛は瞬時に消滅してしまうだろう。
だが――無数の光の槍が結愛に突き刺さる前に、その間にまばゆい閃光がほとぼしる。

「そうはさせるかよ!」

奏多が事前に、不可視のピアノの鍵盤のようなものを宙に顕現させて鍵盤を弾いていたのだ。
青い光からなるのは音色の堅牢(けんろう)堅固(けんご)な盾。その彼なりの極致は光の槍を弾いていく。

「続けて行きますよ! 降り注ぐは氷の裁き……!!」

氷塊の連射が織り成したところで、結愛は渾身の反攻を叩き込む。
瞬時に氷気が爆発的な力とともに炸裂した。