「どんな困難が立ち塞がっても、私達は前に進んでみせるわ!」
「愚かな。ここから生きて帰れると思っているとは」

観月はありったけの力をカードに注ぎ込みながら、まっすぐにリディアの向こう側を見据えた。
逃げる先は安全な場所。
奏多を守り抜くためにも、ここで足止めなどされている暇はないのだから。

「私はもう逃げない。全力で奏多様を護ってみせるわ!」

拳を握り締めた観月は手加減はしないと意を決する。

「慧、加勢するわ!」

ベアトリーチェを含めた『破滅の創世』の配下達を、慧だけで相手取るには危険すぎる。
だからこそ、観月はカードを操り、約定を導き出す。

「降り注ぐは星の裁き……!」

その刹那、ベアトリーチェ達へ無数の強大な岩が流星のごとく降り注ぐ。
カードから放たれた無数の強大な岩の弾はベアトリーチェ達を貫こうとするが、――全てが無干渉に通り抜けていく。

「無駄だ」
「無駄じゃないですよ! 『破滅の創世』様の配下さん達の意識をこちらに向けさせることに成功しましたから!」

リディアが事実を述べても、結愛は真っ向から向き合う。

「私は最後まで諦めませんよ!」

『破滅の創世』の配下達にできた僅かな隙。
今はそれでいいと結愛は噛みしめる。
奏多達と一緒なら、どんなに小さな勝機だって掴んでみせるから。

「今だ、突き進むぞ!」

さらに司を先頭に、『境界線機関』の者達がリディア達の陣形を崩しにかかる。
だが……。

「無意味だ」

そう断じたリディアの瞳に殺気が宿る。
絶え間ない攻撃の応酬。
だが、全ては無意味に、塵のように消えていく。

「――っ」

リディアの表情は変わらない。
深遠の夜を照らす満天の月のような――流麗にして楚々たる容貌は僅かも曇らなかった。
『破滅の創世』の配下達にとって、一族の者達は不倶戴天の天敵である。神敵であると。

「奏多様を安全な場所に送り届けるのは、かなり厳しいな」

流石にそう簡単には通してくれないかと、司は思考を巡らせた。

「それでも止めるさ。たとえ、それが無意味なものだとしても……」
「これ以上、進ませないわ!」

決定打に欠ける連撃。
それでも慧は怯むことなく、観月と連携して次の攻撃に移った。

「あたし達がするべきことは『破滅の創世』様の望むこと。この世界にもたらされるべきは粛清だよ」

そう宣言したアルリットは神の鉄槌を下そうとする。
神命の定めを受けて生を受けた『破滅の創世』の配下達にとって、『破滅の創世』は絶対者だ。