神と人間は根源的に繋がらない。
不可視の関係性。
人間と神を阻む壁はあまりにも高く硬い。
それでも――

「決められた運命なんかに絶対に負けないで!」
「はい。お姉ちゃん、もちろんです!」

観月の奮起に呼応するように、結愛の覚悟が決まる。
ここにいるみんなで『破滅の創世』の配下の者達に本気で抗う。
そして、『破滅の創世』の神意に立ち向かう。

「――全力で奏多様と結愛を守ってみせるわ!」

拳を握り締めた観月は手加減はしないと意を決する。
観月は信じている。奇跡が起こることを。
奏多達が定められた運命を壊してくれることを。

「あたし達が今回、遂行することは『破滅の創世』様を拠点にお連れすること」
「貴様らの問答に付き合うつもりはない」

アルリットとリディアが歩み寄ってくる。
その一言一句に恐怖に駆られ、顔を強張らせる一族の上層部の者達。
『破滅の創世』の配下であるリディアが『破滅の創世』である奏多を狙う、当然の帰結だ。

「なら、俺達はそれを阻止させてもらうとするかねぇ」

逆に、ヒューゴは喜ばしいとばかりに笑んでいる。

「理解できないな。無駄だと分かっていながら、わたし達に歯向かうとは」

リディアはそのまま無造作に右手を斜め上に振り払う。
本来なら、それだけでヒューゴ達は吹き飛ばされただろう。
だが、ヒューゴは手をかざしたことで、その攻撃をなかったことにしたのだ。

「不死能力もだけど、その能力も素晴らしいね。ねー、一族の上層部さん」
「まあな」

アルリットの目に宿った殺意を前にしても、ヒューゴは余裕綽々という感情を眸に乗せる。
この場を打開できる算段があるように――。

「『破滅の創世』の配下、そして不変の魔女、ベアトリーチェ様の力は強大だ。奏多様を守り抜くためには、俺達も協力し合った方がいいんじゃないか。そう思わねぇ?」
「そう思わないから断っているんだ」

司の率直な物言いに、ヒューゴはその唇に「相変わらず、否定的だな」と純粋な言葉を形取らせた。

「雄飛司。いい加減、状況を把握しようぜ。まあ、俺はここで死ぬつもりはないから、できる限りの揺さぶりをかけさせてもらう」

現状を把握したヒューゴは唇を噛む。
このまま、悪戯に時間を消費しても平行線だ。
何もしなくては『破滅の創世』の配下達の前に為す術もなく朽ち果てるだけだろう。
ならば、機先を制した方が確かだ。

「『破滅の創世』の配下達の動きを阻害する必要がありそうだな」

アルリット達を――『破滅の創世』の配下達を侮ってはいけない。
これまでの戦績を思えば、その事実は明白である。