「当たり前だろう！　俺達は『破滅の創世』様を守護する任務を帯びている！」

司がヒューゴ達を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示された。

「――くっ」

ヒューゴが走らせた瞬間的の感情に、状況は明白となった。

一族の上層部の一人であるヒューゴは、二つの厄介な能力を持っている。
不変の魔女、ベアトリーチェ、そして『破滅の創世』の配下達に包囲された状況。

その歴然たる事実を前にして、司の取った行動は早かった。

「おまえ達はどう足掻いても、奏多様をお連れすることはできない」

一族の上層部の者達を斬り裂く軌道で振るったその重力波は極大に膨れ上がり――それは絶大な威力として示される。
ともに立つ味方には奇跡を、立ちふさがる敵には破滅をもたらす、重力操作能力の本領発揮だった。
周囲を巻き添えにした重力波は、立ち塞がった一族の上層部の者達を残らず気絶させる。
そして、破壊された壁の向こう――。

「あれは……」
「ほええ、すごいです。たくさんの援軍が来ましたよ！」

奏多と結愛が見つめた先、上空から次々と多機能ステルス戦闘機が飛来していた。

「理解できないな。この程度で、わたし達から逃げられるとは……くっ！」

だが、司の動きは、リディアの想像とは一線を画していた。

「分かっていないな。おまえ達はどう足掻いても、奏多様を拠点にお連れすることはできない」

司は感情を交えず、ただ事実だけを口にする。
リディアの怒濤の如く迫る攻撃に対抗するように、地上に配置された自衛隊の戦車部隊が大地を抉り、果敢に砲弾を一族の上層部の本部へと叩きつけたからだ。

「奏多様、ここはまもなく、崩れます。ここから脱出を！」
「結愛、行こう」
「はい、奏多くん」

置かれた状況を踏まえた司は即座に逃げの一手を選ぶ。
迷いも躊躇いもない。
奏多と結愛は渡されたパラシュートを背負う。
生き延びた『境界線機関』の者達も、奏多と結愛の身を護りながら撤退する。

「なっ……！」

リディアは一瞬、追いかけるべきか躊躇う。
だが、その迷った数瞬が明暗を分ける一線だった。

「奏多は絶対に死守するさ」
「奏多様は絶対に護るわ」

慧の確固たる決意に、カードをかざした観月は応えた。

「悪いが、ここから先は行かせねぇぜ」

慧は奏多達が撤退する猶予を作るように発砲した。
絶え間ない攻撃の応酬。だが、弾は全て塵のように消えていく。
決定打に欠ける連撃。
それでも奏多と結愛の安全さえ確保できれば、慧と観月が懸念する要項が減る。
あとは全力でこの場から離脱するのみ――けれども致命状態には気をつけながら、慧は観月と連携して次の攻撃に移った。