「氷の裁き……!!」

氷塊の連射が織り成したところで、結愛は渾身の反攻を叩き込む。
瞬時に氷気が爆発的な力とともに炸裂した。

「ぐっ!」

カードから放たれた無数の強大な氷柱は、一族の上層部の者達を突き立てる。

「此ノ里結愛。まずは、こいつから狙え!」

結愛の力を厄介だと判断したヒューゴは、乗客達に指示をしようとするものの――

「そうはさせるかよ!」

奏多が不可視のピアノの鍵盤のようなものを宙に顕現させて、それを阻害した。

「奏多くん、ナイスアシストです! グッジョブです!」
「大げさだな……」

奏多の苦笑に、結愛は表情を喜色に染める。

想いを結ぶのも手を繋ぐのも決して一人ではできない。
――本当は人間ではなくても、たとえ神でも、奏多は今、紛れもなく、『結愛の大切な幼なじみ』として共に生きている。
昨日と全く同じ日にはならないように。
今日と全く同じ明日にもならないから。

「どんな困難が立ち塞がっても、私達は前に進んでみせるわ!」
「愚かな。ここから生きて帰れると思っているとは」

観月はありったけの力をカードに注ぎ込みながら、まっすぐにリディアの向こう側を見据えた。
向かう先は一族の上層部の本部。
奏多を守り抜くためにも、ここで足止めなどされている暇はないのだから。

「私はもう逃げない。全力で奏多様を護ってみせるわ!」

拳を握り締めた観月は手加減はしないと意を決する。

「結愛、奏多様、加勢するわ!」

ヒューゴを含めた一族の上層部の者達を、奏多達だけで相手取るには危険すぎる。
だからこそ、観月はカードを操り、約定を導き出す。

「降り注ぐは星の裁き……!」
「ぐっ……!」

その刹那、一族の上層部の者達へ無数の強大な岩が流星のごとく降り注ぐ。
カードから放たれた無数の強大な岩の弾は彼らを大きく吹き飛ばした。

「今だ、突き進むぞ!」

さらに司を先頭に、『境界線機関』の者達が一族の上層部の者達の防衛陣を崩しにかかる。

『境界線機関』はこの世界の未来を担う、練度の高い精強な部隊だった。
表向き、一族の者達とは協力関係になっている組織である。
彼らは世界各地で『破滅の創世』の配下達と戦闘を繰り広げている猛者だった。
その部隊の構成員は、一族の冠位の者から軍に所属している者まで様々な面子で成り立っている。
きっと彼らは数多の障害を乗り越えながら、それでもいずれは本部へと足を踏み入れるだろう。

「『破滅の創世』の配下、そして幹部の力は強大だ。奏多様を守り抜くためには、俺達も協力し合った方がいいんじゃないか。そう思わねぇ?」
「そう思わないから断っているんだ」

司の率直な物言いに、ヒューゴはその唇に「相変わらず、否定的だな」と純粋な言葉を形取らせた。