『破滅の創世』の配下達は誰よりも何よりも、一族の者に激しい悪意と殺意を振りまいている。
とはいえ、少なくとも今は、『破滅の創世』の配下達は、奏多の意思を無視して強引に連れていくことはない。
だからこそ、それを確実に成し遂げるために、奏多を拠点に連れていこうとしている。
それが今の戦場の様相。
だが、そこに奏多の――『破滅の創世』の神意を加味すれば、最悪の事態が待つ。

「それが何を指していようともな」

それでも慧は握る銃の柄に力を込める。
視線を決してアルリット達から外さずに弾丸を撃ち込む。

「……まぁ、今の俺達ができることは二つ。アルリット達を退いて本部に赴くこと、そして奏多を信じることだけさ」
「……そうね。私も奏多様を信じるわ」

世界への影響を止めるためにも、奏多を守る……それが、今の慧と観月にさし迫りし事態であった。

「観月。これ以上、被害を出さないためにも、ここで何としても食い止めるぜ!」
「分かったわ」

様々な思いが過りつつも、慧と観月は動き出す。

「『破滅の創世』の配下達、一族の上層部、どちらも味方ではないわ。慧が操られることはなくなったけど、この混乱した状況を利用して、奏多様を狙ってくるかもしれない」

そこに疑いを挟む余地はない。
観月が口にしたその言葉が全てを物語っていた。

「そうだね。あくまでも、あたし達が今回、遂行することは『破滅の創世』様を拠点にお連れすることだから」

その一言一句に恐怖に駆られ、顔を強張らせる観月。

「なら、俺達はそれを阻止させてもらうとするかねぇ」

逆に、立ち上がったヒューゴは喜ばしいとばかりに笑んでいる。

「不死のヒューゴ、俺達は、おまえも敵として見なしている」
「ああ、分かっている。だが、俺達が尾行してくることを、『境界線機関』のリーダー様は無下にすることはできない。『破滅の創世』の配下達、一族の上層部、どちらも相手にするのは分が悪すぎる。『境界線機関』のリーダー様はそう言っていたからな」

ヒューゴの的確な疑問に、司は渋い表情を見せる。

「なあ、此ノ里結愛。おまえはどう思う?」
「ほええ……!」

ヒューゴの突然の矛先の変更に、結愛はどうしたらいいのか分からず、あわてふためく。

「『破滅の創世』の配下、そして幹部の力は強大だ。おまえの大好きな幼なじみを守り抜くためには、ここは一時休戦した方がいいんじゃないか。そう思わねぇ?」
「はううっ、それは……」

ヒューゴの指摘に、結愛はわたわたと明確に言葉を詰まらせた。