「いや、動けないんじゃない。これは……」
奏多は刹那、気付いた。
身動きが取れない理由。それは内側から湧き上がる『破滅の創世』としての意思が、奏多の動きを制限しているからだと。
『破滅の創世』であるはずなのに、『破滅の創世』の配下達と分かり合えない。
奏多とアルリット達を隔てる、たった一つの最も重要で決定的な要素。
その要素は……『失った神としての記憶』だ。
その記憶には、一族の上層部が犯した罪過への『破滅の創世』の憤懣がある。
ましてやそれが延々と折り重ねった憎しみに起因するものであるならば、もはや激昂に近いかもしれない。
『破滅の創世』である奏多であればこそ、その怒りを身に染みるほどに理解している。
何度も神としての憤りに――絶望視した過去に囚われてしまうかもしれない。
それでも……諦めたくない。
結愛と……みんなと共に生きたい。
そして、慧にーさんを救いたい。
奏多は現実で踏ん張ると決めている。
奏多が人として生きた人生という道を、『破滅の創世』は否定なんて出来ないはずだ。
それに人間として生まれたことを過ちになんてしたくはないから――。
それでも奏多が事実を知ろうとすればするほど、どれが『正しい』かは分からなくなってくる。
誰かにとって悪だったものが、別の誰かには善となる。
人と神。相容れない思いがぶつかり合う。簡単に答えなど出ようはずもなかった。
しかし――
「奏多くん、負けないでください!」
「……結愛」
奏多の揺れる眸を見つめ、結愛は縋るように彼の腕に掴まる。
「お願いします。奏多くん、負けないでください……」
涙色に染まる指先に。
この時間が永遠に続けば良いと――結愛は願いながら。
だからこそ、今のままで過ごすわけにはいかない想いがある。
「『破滅の創世』様にとって、人の心は不要なものかもしれないです。……でも、奏多くんが心を知らなければ、私はこんなにも奏多くんを好きになることも、愛おしく思うこともなかったんです」
『破滅の創世』としての奏多の意志を、結愛は否定しない。
ただ、今の想いを伝えたいだけ――。
「私は奏多くんが……『破滅の創世』様が大好きです」
結愛は知っている。
そんな素敵な想いが、最期までこの胸に寄り添う理由を。
「だから、この世界で奏多くんと一緒にずっとずっと生きていきたいです! 奏多くんと同じ光景を――明日に繋がる未来を見たいから!」
結愛が示したのは希望という名の確固たる意思。
決して変わることのない願いだった。
奏多は刹那、気付いた。
身動きが取れない理由。それは内側から湧き上がる『破滅の創世』としての意思が、奏多の動きを制限しているからだと。
『破滅の創世』であるはずなのに、『破滅の創世』の配下達と分かり合えない。
奏多とアルリット達を隔てる、たった一つの最も重要で決定的な要素。
その要素は……『失った神としての記憶』だ。
その記憶には、一族の上層部が犯した罪過への『破滅の創世』の憤懣がある。
ましてやそれが延々と折り重ねった憎しみに起因するものであるならば、もはや激昂に近いかもしれない。
『破滅の創世』である奏多であればこそ、その怒りを身に染みるほどに理解している。
何度も神としての憤りに――絶望視した過去に囚われてしまうかもしれない。
それでも……諦めたくない。
結愛と……みんなと共に生きたい。
そして、慧にーさんを救いたい。
奏多は現実で踏ん張ると決めている。
奏多が人として生きた人生という道を、『破滅の創世』は否定なんて出来ないはずだ。
それに人間として生まれたことを過ちになんてしたくはないから――。
それでも奏多が事実を知ろうとすればするほど、どれが『正しい』かは分からなくなってくる。
誰かにとって悪だったものが、別の誰かには善となる。
人と神。相容れない思いがぶつかり合う。簡単に答えなど出ようはずもなかった。
しかし――
「奏多くん、負けないでください!」
「……結愛」
奏多の揺れる眸を見つめ、結愛は縋るように彼の腕に掴まる。
「お願いします。奏多くん、負けないでください……」
涙色に染まる指先に。
この時間が永遠に続けば良いと――結愛は願いながら。
だからこそ、今のままで過ごすわけにはいかない想いがある。
「『破滅の創世』様にとって、人の心は不要なものかもしれないです。……でも、奏多くんが心を知らなければ、私はこんなにも奏多くんを好きになることも、愛おしく思うこともなかったんです」
『破滅の創世』としての奏多の意志を、結愛は否定しない。
ただ、今の想いを伝えたいだけ――。
「私は奏多くんが……『破滅の創世』様が大好きです」
結愛は知っている。
そんな素敵な想いが、最期までこの胸に寄り添う理由を。
「だから、この世界で奏多くんと一緒にずっとずっと生きていきたいです! 奏多くんと同じ光景を――明日に繋がる未来を見たいから!」
結愛が示したのは希望という名の確固たる意思。
決して変わることのない願いだった。